巻頭の言葉

JFEホールディングス名誉顧問

數土文夫すど・ふみお

悪の小なるを以て
れをすことなかれ。
善の小なるを以て為さざること勿れ。けん、惟れとくく人を服す。
三国志・蜀書(先主伝)

2026年6月号

特集
人間を磨く
盲亀浮木もうきふぼく」という言葉がある。

海中深く暮らしている目の見えない亀が100年に一度だけ海上へ首を出す。ちょうどその時、真ん中に穴のあいた木が流れてきて、亀の首はすぽっとその穴の中に入る。人間に生まれるのはそれくらい難しくありがたいことなのだと、お釈迦しゃかさんがいったという。『雑阿含経ぞうあごんきょう』にある話である。

「帰る時来た時よりも美しく」という言葉は禅僧・松原泰道たいどう師から教わった。私たちの体も心も自分で作ったものは一つもない。すべて天地から借り受けたものである。借り受けたものはいずれ返さなければならないが、その時は借りた時よりも美しく綺麗きれいにして返すことができるような生き方をしなければならないということである。

この2つの言葉が暗示するもの、それは人間を磨くことの大切さである。人間を磨くことはこの世に生を受けたすべての人に課せられた使命だということである。それをこの2つの言葉は私たちに教えてくれているように思う。

では、どうすれば人間を磨くことができるのか。
特集 人間を磨く
連載
致知随想