巻頭の言葉

JFEホールディングス名誉顧問

數土文夫すど・ふみお

人、
遠き慮おもんぱかりなければ
必ず近き憂うれいあり
──『論語』衛霊公第十五

2026年9月号

特集
めざすものを持つ
『論語』の「公こう冶や長ちょう第五」に、こういう話がある。

孔子こうしの弟子の中でも孔子が最も愛していた顔がん淵えんと子し路ろがそばにいた時、孔子が言った。

「盍なんぞ各々おのおの爾なんじの志こころざしを言わざる──どうだ、お前たち、それぞれの志を言ってみないか」

すると、まず子路が答えた。

「願わくは車しゃ馬ば衣い輕けい裘きゅう、朋ほう友ゆうと共にし、之これを敝やぶりて憾うらむこと無からん──車でも馬でも衣服や毛皮の外がい套とうでも、友だちと一緒に使って、それを破られても恨みに思うことがないようになりたい」

次に顔淵が言う。

「願わくは善に伐ほこること無く、勞ろうを施ほどこすこと無からん──善よいことをしても自慢せず、苦労や嫌なことを人に押しつけて自分だけが楽をしようとすることのないようにしたい」
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