2016年6月号
特集
関を越える
インタビュー①
  • 木下サーカス社長木下唯志

一日一死の思いが
関を越える力になる

今年(2016年)創業140年を迎えた世界三大サーカスの一つ、木下サーカス。時代の流れとともに一度は消えかかった経営の火を、再び興隆の途へと導いたのが四代目社長の木下唯志氏だ。関を超えたことで世界に認められるに至った木下サーカスの歩みを木下氏に伺った。

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常に進化し続ける

──現在開催中の大阪花博公演も連日大盛況ですね。

特に土日祝日には1日3回の公演を行うのですが、おかげさまで親子連れを中心にテント内に設置してある2,000席がすべて埋まるんですよ。

──取材前に観させていただきましたが、次々と迫力あるショーが実にテンポよく進んでいき、アッと言う間の2時間でした。これなら子供から大人まで楽しめますね。

私が子供の頃には、サーカスというとどこかうら寂しいというか、もの悲しいというイメージが残っていましたけど、いまはすっかり変わっているんですよ。
サーカスだけに限れば国内におけるライバルは、もうほとんどゼロに近い状況になりました。一方、エンターテインメントの分野ではディズニーやUSJなどライバルがたくさんいますから、我われも常に進化していかないとお客様に飽きられてしまいます。
ですから毎年ラスベガスに行ったり、モナコやパリでいろいろなショーを観に行っては新しいことをどんどん吸収しています。やはり一流のものを観なければ、感性は磨かれていきません。一流のものを知らなければ、一流のものを提供することはできませんからね。

──不断の努力によって、木下サーカスを世界三大サーカスの一つに押し上げてこられたのですね。

2015年、モナコのステファニー王女から、特別大使の任命がありまして、1人目がアメリカのリングリングサーカス、2人目がドイツのクローネサーカス、3人目に中国雑技団、4人目にハンガリー国立サーカス、5人目にロシアのボリショイサーカス、そして6人目に日本の木下サーカスという順番です。もっとも、中国、ハンガリー、ロシアは国立なので、それらを除けば木下サーカスは世界でも3人目に選ばれたことになります。
さらにお客様の動員数で見ると、木下サーカスは年間100万人を超えるので、これだけ見ればリングリングサーカスに次いで世界でも2番目につけているんですよ。

木下サーカス社長

木下唯志

きのした・ただし

昭和25年岡山県生まれ。岡山県立操山高等学校を卒業後、明治大学に進学。49年木下サーカス入社。平成3年4代目社長に就任、現在に至る。