2020年4月号
特集
命ある限り歩き続ける
インタビュー①
  • 元韓国空軍大佐崔 三然

日本よ、目を覚ませ!

92歳、なおも歴史の真実を語り続ける

先の大戦では日本の軍人として戦い、戦後も日韓を行き来して両国の近現代史と共に歩んできた崔 三然氏は、92歳のいまも日本への提言活動を続けている。歴史の生き証人として、いまなお歩き続ける氏の思いを、実体験を交えてお話しいただいた。

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近代史の生き証人として

——戦前から日韓の歴史をつぶさに見てこられたさいさんは、92歳のいまも日本で活発に提言活動を続けておられますね。

先日は「朝鮮半島は自立、正常な国家たり得るか?」という演題で講演をしました。韓国はいまがけっぷちだし、韓国がダメになったら日本にも深刻な影響が及ぶと警鐘けいしょうを鳴らしたんですが、皆さん大変喜んでくれました。
私は朝鮮半島に生まれましたが、これまで一貫して、国籍や人種を超えた人類普遍の価値観を重視して生きてきました。世界では、共産主義勢力と自由民主主義勢力がお互いに「俺のほうが正しい」と主張し合っています。じゃあどちらが正しいのか。やはり人類普遍の価値観に照らして、実質的に正しいと証明できるものが正義ではなかろうか。常にそうした公平で最善の選択をすべく努力を重ねていくべきだと私は言いたいですね。
そういう視点で世界の動きを見ると、決してよい方向には向かっていないというのが私の印象です。

——世界はよい方向に向かっていない。

ロシアはソ連の頃と同じようなことをやっているし、中東ではいざこざが続いているし、イギリスはEUを離脱した。世界がこんなに混乱しているのに、アメリカは自分のことしか知らないぞという立場だし、中国はその隙を突いて世界の覇権はけんを奪い取ろうとしている。さらに北朝鮮は日本人を拉致らちするわ、核開発をするわ、いろんな狼藉ろうぜきを働いているし、韓国は日本やアメリカに助けられて発展してきたのに、共産陣営に寝返りを打とうとしている。
こういう状況を見ると、ささやかなことしかできない身でありながら、黙ってはおられないんです。戦前は日本陸軍で大東亜戦争を戦い、戦後は半島へ戻って朝鮮戦争を戦い、92年の人生を歩んできた近代史の生き証人として、責任を果たすべき身ではなかろうか。もう体もあまり言うことを聞かんのですが(笑)、ただただその一心で歩き続けているのです。

元韓国空軍大佐

崔 三然

さい・さんぜん

1928年生まれ。1943年日本陸軍少年飛行兵として大東亜戦争を戦う。終戦後、韓国へ戻り、大学で英文学、大学院で行政学などを専攻。朝鮮戦争に空軍将校として従軍。1971年大佐で退役。退役後は経済界の要職を歴任し、韓国工業基盤の発展に尽力。退職後は、日韓両国に跨る民間交流、執筆、講演に取り組んでいる。韓国空軍士官学校名誉教授。