2018年8月号
特集
変革する
インタビュー③
  • ハウステンボス取締役兼CTO hapi-robo st社長富田直美

自分の幸せをシンプルに
考えて生きる

長崎県佐世保市のテーマパーク・ハウステンボスに、ロボットがメインスタッフとして働く、世界でも珍しいホテルやレストランがある。その実現に尽力したハウステンボス取締役兼CTOの富田直美氏は、まさに変革の推進者である。その富田氏に、人生の歩みとともに、テクノロジーとの向き合い方、自らの生き方を変革し、幸福な人生や社会を実現していく秘訣を縦横に語っていただいた。

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ロボットが働く「変なホテル」

——富田さんが取締役兼CTO(チーフ・テクノロジカル・オフィサー:最高技術責任者)として携わっている、ロボットがスタッフとして働くハウステンボスの「変なホテル」や「変なレストラン」が大きな話題を呼んでいますね。

ありがとうございます。
もともと僕は60歳まで外資系IT企業11社の代表を務めていました。その後、大学で教えたりしていたんですが、65歳の時にかねて親交があった日本総合研究所や多摩大学を設立された野田一夫先生に誘われ、日本総合研究所の理事になったんです。
野田先生は、日本の「ベンチャー三銃士」と呼ばれる、パソナグループの南部靖之社長、ソフトバンクの孫正義社長、長年赤字だったハウステンボスを黒字転換させたH・I・Sの澤田秀雄社長を育てた人で、僕は澤田社長と野田さんを通じて親交がありました。
そして2014年頃、野田先生に最初に頼まれた仕事が、ハウステンボスの近くにある長崎オランダ村(長崎県西海さいかい市)の再開発事業でした。「澤田君も関係しているんだけど、リーダーがいなくて困っているからやってくれ」と。

——ああ、再開発のリーダーに選ばれたのですね。

すぐ現地調査に行きましたが、その頃僕はドローンの空撮くうさつに熱中していましてね。関係者に説明を受けるより、空から撮った映像を見たほうが手っ取り早く長崎オランダ村の現状が分かるだろうと、敷地内でドローンを飛ばしました。というより、ドローンを飛ばしたくて調査に行った(笑)。
で、その帰りに「澤田さんがハウステンボスに来てるかもしれない」と思って、彼に電話してみたんですね。そうしたら「来てますよ」と言うので、ハウステンボスまで会いに行き、そこでもドローンを飛ばしてその映像を澤田さんに見せたら、「すごい」「CMで使いたいからハウステンボスの綺麗きれいなところを撮ってよ」と喜んでくれて……。そのまま澤田さんにわれる形で、ハウステンボスの経営顧問に就任したわけです。

——経営顧問としてどのような仕事に取り組まれましたか。

最初に出席したのが、まさにロボットがスタッフとして働く「変なホテル」開設1年前の会議でした。大手メーカーの技術者が澤田社長や僕の前でプレゼンテーションをしたんですが、僕は彼ら全員に「そんな企画内容で1年後にオープンできるか!」と突っ込んだんですよ。
それから僕は経営顧問兼〝CTO〟(2016年に取締役兼CTO)になって、ハウステンボスの技術全般を見るようになり、「変なホテル」も全部一からプロデュースをし、開設後の発展も含めていろいろなことに取り組んできたんです。その中でも、「変なホテル」はとてもうまくいっています。
ロボットにフロント業務や雑務を任せることで、当初30人いた人間のスタッフを現在では約六人に減らすことができています。第2期棟のオープンで客室が倍増しているにもかかわらず、です。宿泊客は多いし、生産性は高いし、利益もすごく出ています。

——それは素晴しいですね。

ハウステンボスの「変なホテル」のポイントは、お客様に実際にロボットを使ってもらうことで、実証実験をしながらロボットを改善していけることです。なので、いまもロボットはどんどん進化していっていますよ。これでいいという完成形はないんです。
それで澤田社長が「これからはロボットだ。ロボットの会社をつくってくれ」と言うので、ロボット事業会社「hapiハピ-roboロボ stエスティ」を2017年に立ち上げました。この社名にはロボット、テクノロジーで人の幸せを実現していくという願いが込められています。これからロボット事業開発、実証実験・研究開発、ロボット市場の開拓までロボットに関するすべてのことを行っていきたいと思っています。

ハウステンボス取締役兼CTO hapi-robo st社長

富田直美

とみた・なおみ

昭和23年静岡県生まれ。47年大学卒業後、田村電機製作所(現・サクサホールディングス)入社。その後、日本アシュトンティト、ピクチャーテルジャパンなど、多数のIT系企業の経営に携わる。平成26年ハウステンボス経営顧問兼CTO(チーフ・テクノロジカル・オフィサー:最高技術責任者)に就任し、ロボットがスタッフとして働く「変なホテル」や「変なレストラン」の運営に携わる。28年取締役&CTO。29年よりロボット事業会社hapi-robo st社長を兼務。