2024年12月号
特集
生き方のヒント
トップインタビュー
  • 塩瀬総本家会長、第三十四代当主川島英子
我が百寿の人生を歩み来て

利をはなれ 心のすべて
無なる時 有を生ずる
世とぞ知りたり

日本の饅頭の元祖として創業から675年の歴史を紡ぐ塩瀬総本家。時代の風雪に耐え、代々の当主たちが暖簾を大切に守り続けてきた。第34代当主を務めた会長の川島英子さんは今年満100歳を迎え、その矍鑠たる姿、淀みのない語り口はまさに圧巻である。時に優しく時に力強く、幾多の山坂を越えてきた人生体験を交えながら語る「人生百年時代を溌剌と生き抜くヒント」に学ぶ。

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10月8日(火)、東京築地の塩瀬総本家本店を訪ねた。菓子商初の宮内省御用達店であり、室町時代より675年の歴史を有する。今年百寿を迎えた第三十四代当主の川島英子さんは愛嬌溢れる笑顔で私たちを出迎えてくださった。

健康の秘訣は日常の習慣にあり

——川島会長、お目にかかれて光栄です。素敵なお着物姿ですね。

本当にありがたいことに、この歳になっても年中お客さんがいらっしゃって、「会長さん元気?」「会いたいわ」とか「長生きをもらいたいから握手して」って(笑)。そんなことでいつ誰が訪ねてくるか分からないから、変な格好をしていられないのよ。朝起きて寝間着のままでいたんじゃ、だらしなくて目が覚めない。やっぱり着物に着替えて帯を締めて髪を結うと身も心もシャキッとする。これは昔から習慣になっています。

——実にかくしゃくとされていて、100歳とは思えません。

社員も大変なことがあると私のところに相談に来ますから、あまりボヤッとしている暇がない。お菓子屋をやっているおかげさまですね。緊張感や刺激が常にあるわけで、それがやっぱり元気の素、健康の秘訣ひけつじゃないでしょうか。いつの間にか100歳になっちゃったという感じ(笑)。

塩瀬総本家会長、第三十四代当主

川島英子

かわしま・えいこ

大正13年東京生まれ。昭和55年社長に就任し、第34代当主を継ぐ。60年中国杭州市の聚景園に始祖・林浄因の記念碑を建立(平成7年に林浄因の先祖の墓がある西湖国立公園孤山に移転)、11年会長に就任。著書に『まんじゅう屋繁盛記~塩瀬の650年~』(岩波書店)がある。