2022年12月号
特集
追悼・稲盛和夫
我が心の稲盛和夫⑤
  • 日本航空副社長清水新一郎

常に明るく前向きに──

この記事は約5分でお読みいただけます

暗闇の中に差した一筋の光

ありがとうございました──稲盛さんの訃報に接して、稲盛さんと共に日本航空(以下JAL)の再建に取り組んだ日々が改めて思い起こされ、感謝の気持ちがぐっと胸に込み上げてきました。

2010年にJALが破綻はたんした当時、私は客室企画部長を務めておりました。破綻を迎えるまでにはきょくせつがあり、どうすればこの危機を乗り越えることができるのか、社員皆がそれぞれの立場で悩み、もがいていたように思います。私も解決策を求めて様々な本を読んでいたのですが、その中でも稲盛さんの著作に感動し大きな影響を受けました。ですから、稲盛さんがJALの再建にいらっしゃると知った時には、暗闇に一条の光が差すような思いでした。

しかも、「絶対に無理だ」「二次破綻する」などと、反対の声が渦巻く中で、「残された3万2,000人の従業員の雇用を守れる」「日本経済全体への悪影響を食い止めることができる」「ANAとの正しい競争環境を維持して、国民の利便性を図る」との3つの大義を掲げ、無報酬で再建を引き受けてくださったのです。JALの社員は、当初稲盛さんに冷ややかだったと言われることがよくありますが、少なくとも私が感じた限り、そんなことはありませんでした。私と同じように、多くの社員が、「よくぞJALに来てくださった」という思いで稲盛さんを迎えたのです。

日本航空副社長

清水新一郎

しみず・しんいちろう

昭和37年東京都生まれ。60年日本航空(JAL)入社。客室企画部長、常務執行役員人財本部長、取締役専務執行役員秘書室長などを歴任し、令和2年より現職。