2022年12月号
特集
追悼・稲盛和夫
我が心の稲盛和夫④
  • 京都市長門川大作

動機善なりや
私心なかりしか

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もう一度お礼を申し上げたかった

もう一度お顔を拝見して、お礼を申し上げたかった──。仕事から生き方まで、多くのことを学ばせていただいた稲盛さんのほうに接し、様々な思い出がよみがえり、込み上げてくるものがございました。

ここ最近、体調がよくないとは聞いておりましたけれども、稲盛さんが設立に尽力されたJリーグ京都サンガF.C.の応援に行った際などには、「稲盛さん、おられへんかな……」と、ついつい会場を見回してしまう自分がいました。

その京都サンガF.C.が、今年2010年以来12シーズンぶりにJ1に昇格し、頑張っておられ、感慨深い。また文化庁の京都移転も来年3月に迫っております。

さらに、文化芸術を大切にされる稲盛さんから高く評価いただいた京都芸術大学の京都駅東側・崇仁すうじん地区への全面移転も来秋です。

これからいよいよという時に、経済のみならず文化・芸術・スポーツ・科学・教育と、幅広い分野において京都の発展に尽くしてくださった稲盛さんがいらっしゃらない。本当に寂しいです。

稲盛さんに初めてお目にかかったのは、京都市教育委員会に勤めていた30代の頃でした。稲盛さんの講演会に参加したのです。

もちろん、以前からご著書などは拝読しておりましたが、初めて肉声に触れ、「実践を交え、人の心にみ入るように話される方だな」と感銘を受けました。また「心がすべて」「思うことからすべてが始まる」「思いを継続していくことが大事なんだ」と、み締めるように何度も繰り返しておっしゃっていたことが、いまも私の脳裏に鮮明に残っております。

その後、縁あってある学習会のグループに加えていただき、稲盛さんの教えに身近に接する機会に恵まれました。2001年に教育長を拝命してからは、特に教育改革に取り組むに当たって稲盛さんに様々なご支援をたまわりました。

例えば、稲盛さんが私財を投じて1984年に創設された「京都賞」の受賞者に、地元の高校で講演してもらおうとの構想は、市立堀川高校の生徒から実現し、いま多くの高校生に広がっています。またこれは20年ほど前のことですが、親に虐待を受けている子供が増えていることを憂えた稲盛さんは、京都市内の児童養護施設に自ら足を運ばれ、「京都大和の家」や「山城こども家庭センターだいわ」をつくられました。

とにかく稲盛さんは世の中のあらゆる課題に目を向け、特に子供たちを大事に考えておられました。

京都市長

門川大作

かどかわ・だいさく

昭和25年京都府京都市生まれ。高校卒業後、京都市教育委員会に勤務。その後、立命館大学二部に学ぶ。教育次長を経て、平成13年教育長に就任。地域ぐるみの教育改革に心血を注ぐ一方、内閣「教育再生会議」委員、中央教育審議会等の委員を歴任。20年京都市長に就任。現在4期目。