2017年3月号
特集
艱難汝を玉にす
インタビュー
  • 八芳園取締役専務 総支配人井上義則

困難を
乗り越えた時、
人は輝く

時代の変化を受けて、年間挙式披露宴組数がピーク時の3分の1にまで落ち込み、経営危機に陥っていた八芳園。その事業の立て直しに奮闘し、見事V字回復を成し遂げた井上義則氏に、改革の軌跡と困難を乗り越える要諦を伺った。

この記事は約14分でお読みいただけます

厳しい時こそ変革を起こすタイミング

──井上さんは、挙式披露宴組数が減少していた八芳園を、約4年でV字回復させたそうですね。

八芳園はかつて、年間約2,800ほどの挙式披露宴組数がありましたが、私が入社した頃には1,000組ほどに落ち込んでいました。
時代の変化や結婚式場の多様化など理由は様々ですが、ブライダル業界を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。まず結婚しないという方が増えていること。それから、結婚はするけど入籍だけという方も多くなっていて、平成25年度は、年間婚姻件数が約66万組ですが、式・披露宴まで実施される方は6割くらいではないかと言われています。

──結婚を取り巻く環境そのものが変わってきているんですね。

ただ、その中でも、八芳園には創業から74年という歴史と美しい日本庭園という大きな資産がありますから、お客様を結婚式後も追いかけていく「生涯顧客化」に業界でもいち早く取り組んできました。例えば、結婚式を八芳園で挙げたら、子供の七五三や銀婚式、金婚式も八芳園でやりましょうとか、そうした取り組みはまだ競争がない領域なんですね。

──なるほど。むしろお客様が結婚式を挙げた後が大事だと。

結婚されたお客様が夫婦となり、子供が生まれ、というライフイベントのサポートを我われが務めていく。八芳園が先頭に立って、その新しい概念を結婚式場に取り込むことで、厳しさを増すブライダル業界に楔を打ち込み、業界のルールチェンジを果たしていきたいと思っているんです。
そして、その取り組みこそ、家族三代、四代、五代……と末永くお客様とお付き合いをして、未来のお客様を構築していくことにも繋がっていくと考えています。
ですから、環境が厳しい時は変革を起こすタイミングなのであって、ある意味僕は、いまの厳しさを楽しんでいるんですね(笑)。

八芳園取締役専務 総支配人

井上義則

いのうえ・よしのり

昭和45年埼玉県生れ。ブライダル企業に就職し、サービス、営業、企画、広報を経験後、婚礼システム販売会社などを経て、平成15年、当時経営危機に直面していた株式会社八芳園(東京都港区)に入社。事業の立て直しに携わり、ピーク時から1,000組前後まで落ち込んでいた年間挙式披露宴組数を、約4年で2,000組を超えるまでに回復させ、以降6年連続で2,000組以上を達成。25年より現職。