2017年3月号
特集
艱難汝を玉にす
インタビュー
  • フジゼミ塾長藤岡克義

つまずき、
寄り道、回り道
は財産になる

広島県福山市に奇跡の塾と呼ばれる学習塾がある。その名も「フジゼミ」。非行や不登校、高校中退、偏差値30台といった生徒たちを国公立大学や難関私立大学に合格させているのだ。塾長の藤岡克義氏もかつては道を踏み外し、20歳を目前にして大学進学を決意。ゼロから人生をやり直した。その経験をいま若者たちに伝えている。藤岡氏の歩みはまさに「艱難汝を玉にす」という言葉そのものと言えるだろう。

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フジゼミが奇跡の塾と呼ばれる理由

──藤岡さんが塾長を務めるフジゼミは、非行や不登校、高校中退、偏差値30台といった生徒たちを国公立大学や難関私立大学に合格させていることから、奇跡の塾と呼ばれています。

これはマスコミが勝手に言い出したことで、私は奇跡だとは全然思ってなくて、ただゼロから教え直しているだけなんですよ。
うちは勉強したい人だったら、学歴も経歴も年齢も問いません。現在の生徒数は約80名で、現役の高校生や浪人生が7~8割ですけど、あとの2~3割は高校中退、小学校も通っていない、重度の不登校、非行少年、鑑別所や少年院に入っていた、執行猶予中とか、いろんな人がいます。いま最年長は42歳ですけど、それくらいになって進学や資格取得が必要な人っているんですよ。
だから、受験生ならここから始めるという一般的なカリキュラムを取っ払って、その人のレベルに合わせて中学1年の内容からやる必要があったり、掛け算ができないという子も来るので、ゼロから教え直していく。
それと、一般的な塾は授業を受けて帰るだけなんですけど、うちのもう一つの特徴は、授業を受けたらその内容の演習問題を徹底的にやって、テストして、90点以上の合格点を取るまでは何回も何回もやる。合格点を取らなかったら上のレベルに行かせない。そういうやり方を取っています。

──徹底して反復させるのですね。

そうです。やっぱり何でこの答えになるんだろうということを自分で考えて、苦労して、それがテストでもできるようにならないと、入試で戦えないんですよ。
できないのはこれまでやっていなかったからであって、どんな人でも本気でやったらどこまでもできるようになると思っています。実際、3か月前まで中学校の英単語を勉強していた子が英検準2級を取ったり、中卒で暴走族の総長だった子が2年で早稲田大学教育学部に合格してきました。

──それはすごい。

うちにはおよそ勉強とは無縁そうな人たちが真剣に勉強をしている姿があるので、それを見た周りの生徒たちが「自分もやらなきゃ」って刺激を受けたり、お互いに勉強を教え合ったりと、切磋琢磨する環境があるのも他の塾にはない強みかもしれません。でも、まだまだ発展途上で改善の余地はたくさんあると思っています。

フジゼミ塾長

藤岡克義

ふじおか・かつよし

昭和50年広島県生まれ。高校を1か月で中退後、単身東京に出て酒類販売会社に住み込みで勤務。16歳の時に交通事故で右目の視力を失い、1年遅れで入学した2度目の高校も半年で中退。様々な職業に就いた後、20歳で國學院大學経済学部に進学。㈱大林組勤務を経て、平成16年学習塾フジゼミを設立。高卒認定試験、看護師などの各種資格試験、大学受験指導を行う。著書に『大切なのは「つまずき 寄り道 回り道」』(小学館)。