2022年9月号
特集
実行するは我にあり
インタビュー①
  • ドムドムフードサービス社長藤﨑 忍

ドムドムバーガー
復活の軌跡

39歳まで主婦だった私の〝思いやり〟改革

日本初のハンバーガーチェーン・ドムドムハンバーガー。倒産の危機に直面した老舗チェーンをV字回復させたのが現社長の藤﨑 忍氏である。39歳まで主婦だった氏は夫の病をきっかけに仕事を始め、渋谷109のブティックでは5年で年商を2倍にするなど驚くべき実績を上げてきた。その後、行く先々で〝実行〟によって人生を切り開いてきた氏が起こした、奇跡の復活劇を語っていただいた。

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コロナ禍で念願の2期連続黒字を達成

——新型コロナウイルスの感染拡大により、飲食業界は大きな打撃を受けました。その中でドムドムハンバーガーは快進撃を続けていらっしゃいますね。

おかげさまで、様々な制約のあったコロナにおいて、2021、22年の3月度決算で2年連続の黒字を達成しました。
ただ、黒字化というのはあくまで企業としてのスタートラインですので、「ここからが本当のスタート」というのがいまの率直な思いです。
ドムドムバーガーは1970年、東京都町田市で誕生した日本初のハンバーガーチェーンです。最盛期の90年代は全国400店舗近くまで拡大したものの、2000年前後からは赤字が続き、店舗数も10分の1以下に激減。経営存続の危機に直面していたと聞いています。2017年に経営再建のためレンブラントHDグループが買収し、その翌年から私が社長を引き継ぎました。今年(2022)で5年目になります。

2019年10月に発売された「丸ごと!!カニバーガー」。SNSで話題になり、売り切れ店舗が続出した

——社長に就任して早々結果を出されたのですね。

「おいしさ」はお客様との最低限の約束ですから、そこに付加価値をつけなければならないと考えてきました。そのため「ファストフードはこうあるべき」という固定観念にとらわれず、チャレンジを続けてきたんです。
例えば大手チェーンではやらないような、高級食材のソフトシェルクラブ(殻ごと食べられるやわらかいカニ)を1匹贅沢ぜいたくにサンドした「丸ごと!!カニバーガー」は、2019年の発売直後から、SNSで拡散され火がつき、売り切れ店舗が続出するなど大きな話題を呼びました。
また翌年にコロナ禍の社会貢献の一環として始めたロゴマーク入りマスクの販売は、累計17万枚の売り上げを記録。他にもイベントの出店やアパレルブランドとのコラボなど、既存の枠に囚われない施策で根強いファンを獲得してきました。

ドムドムフードサービス社長

藤﨑 忍

ふじさき・しのぶ

昭和41年東京都生まれ。青山学院女子短期大学卒業後、政治家の妻となり39歳まで専業主婦として夫を支える。平成17年よりファッションビル渋谷109のセレクトショップ店長、23年に居酒屋の開業を経て、29年11月よりドムドムフードサービス入社。30年8月より現職。著書に『ドムドムの逆襲』(ダイヤモンド社)など。