2018年8月号
特集
変革する
インタビュー①
  • ねぎしフードサービス社長根岸榮治

経営理念の共有が
会社に変革をもたらす

牛タン、とろろ、麦飯のランチで定評がある牛タン「ねぎし」。東京・新宿を中心に店舗展開を図るねぎしフードサービス社長・根岸榮治氏は、これまでに様々な失敗や挫折を経験し、それらを経営の知恵に変えてきた。同社のモットーである理念共有、人材教育という考えに行き着くまでの軌跡を語っていただく。

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店舗は店長以上のレベルにはならない

——「ねぎし」といえば、牛たんに、とろろ、麦飯という取り合わせのランチが人気ですね。

おかげさまで、私どものメニューは若い女性客の皆さまにも大変喜ばれています。1981年に東京に出てきて37年になりますが、「ねぎし」は毎年1店舗のペースで拡大を続けてきて、今(2018)年40店舗目を立ち上げるところなんです。年商は71億1,000万円。年間に520万人のお客さまにご利用いただいています。
私どものポリシーは、東京の新宿駅から30分圏内の地域に店を構えることです。国内では札幌から鹿児島まで、海外では中国やシンガポール、マレーシア、タイなどから出店の要請をいただいてきましたが、ありがたいお話とは思いつつも、すべてお断りしてきました。出店範囲を限定する理由は、後ほどお話ししたいと思いますが、そこはどうしても崩すことのできない部分なんですね。

——現在、重点的に取り組まれているのは、どのようなことですか。

昨年(2017年)12月には第2ブランドとして豚肉専門のランチの店(「ポークポークポークねぎポ」)を有楽町にオープンさせました。今年いっぱいかけてじっくり商品開発をして、店舗展開を図るのが目標の一つですね。この他に直面している問題といったら、やはり少子高齢化と人口減少でしょうか。

——どういうことですか?

私は2020年に東京オリンピックが終わったあたりから、企業は非常に厳しい時期に入ると見ているんです。若い人材が減ってきていますからね。いままで10人で回していた店を6、7人で回すようになると、閉店せざるを得なくなる。2、3か月は店同士で助け合うことができたとしても1年は継続できません。共倒れとなる危険性もあります。これからそういう店舗なり企業なりが続々と出てくると予想されています。
そのような厳しい時代を乗り越える重要なキーワードは質です。この成熟した時代にお客さまが求めているのは、量よりもむしろ質なんです。具体的に言えば、「ねぎし」にとっての質とは店舗のレベルを上げることなんですね。企業は社長以上のレベルにはならないとよく言われますが、「ねぎし」を成長させようと思えば、私自身が成長しなくてはいけない。それと同じように、店舗を成長させようと思ったら、店長のレベルを上げなくてはいけません。
その時、最も大事になってくるのは、私たちは何のためにこの会社にいるのか、どのような目的のために仕事をしているのか、といういわゆる経営理念やビジョンを全員で共有し実践することなんです。私はそのことが会社や店舗の質を高める第一歩だと思っていて、「理念共有」と「人財共育」は、我が社にとっては重要な取り組みの柱となっています。

ねぎしフードサービス社長

根岸榮治

ねぎし・えいじ

昭和15年福島県生まれ。東京で大学卒業後、43年帰郷。45年ねぎしフードサービスを立ち上げ多業態の飲食店を展開。56年から牛たん「ねぎし」を東京・新宿を中心に店舗展開している。