2024年4月号
特集
運命をひらくもの
対談
  • 泰門庵住職堀澤祖門
  • 開華GPE代表理事村松大輔

一念三千

仏教と量子力学の
融合が
世界平和をひらく

比叡山延暦寺で最も過酷な修行の一つとされる十二年籠山行を戦後初めて満行し、95歳を迎えるいまなお、ますます情熱の火を滾らせ仏の道を求道し続けている堀澤祖門老師。最先端科学である量子力学の理論を子供たちの教育やセミナーに生かし、多くの人々の持てる潜在能力を華ひらかせてきた開華GPE代表理事の村松大輔氏。よりよい世の中の実現という志を同じくするお二人が語り合う、仏教と量子力学の融合がひらく幸福な人生、対立と争いのない平和な世界へと至る道――。

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本対談は、比叡山のふもとにある滋賀院門跡にて行われた。

不思議なご縁に導かれて

村松 きょうは尊敬する堀澤先生と「仏教と量子力学」をテーマに対談できるという有り難い機会をいただき、本当にありがとうございます。心待ちにしていました。

堀澤 こちらこそ、村松さんとじっくり対話できることを楽しみにしていました。私たちの最初の出逢いは、3年ほど前でしたか。

村松 堀澤先生との出逢いのきっかけとなったのは、『致知』の2021年5月号に、帯津三敬病院名誉院長・帯津良一先生と私の対談「波動とエネルギーを高めて生きる」が掲載されたことでした。
その対談を、日本天台宗の開祖でんぎょうだいさいちょうしょうにんが開いた清水寺(福岡県みやま市)の鍋島隆啓りゅうけい和尚おしょうがご覧になり、かねて私と親交のあった遍照寺へんじょうじ(山口県上関町)の福嶋弘祐和尚を通じて連絡をくださったことがご縁の始まりです。
そして2か月後、『致知』2021年7月号に堀澤先生と俳優の滝田栄さんの対談が掲載されたことで、今度は鍋島和尚が堀澤先生を私に紹介くださって、3人で比叡山の麓にあるKKRホテルびわこでお会いすることになったのでした。いま振り返ってみても、本当に奇跡のような出逢いでした。

堀澤 鍋島隆啓さんは私の最も親しい友人の一人ですけれども、とにかく村松さんの記事を読んですごく感激して、素晴らしい人がいると電話をしてくれたんです。
宗教の世界だけでは、どうしても視野が狭くなってしまいますからね、量子力学の理論をもとに子供たちの教育やセミナーなどに取り組んでいる村松さんと対話をしていると、ぐーっと新しい視野が開けていく感覚を覚えました。それが私には非常に有り難くて。

村松 私も同じです。両親はとても信仰心があつく、私も子供の頃からよくお寺に行ってお坊さんの講話を聴いていましたし、お寺の雰囲気やお線香の匂いがとても好きでした。ですから、堀澤先生のお話を伺うたびに、全身が喜んでいる感覚を覚えるんです。また、量子力学の話をすると、「それは仏教ではこういうことだよ」と教えてくださって、仏教と量子力学がどんどんつながっていったんです。

堀澤 そういう意味では、私と村松さんは不思議なご縁で結ばれている無二の友であり、兄弟だと思っています。まぁ、生きている限りは、これからも兄弟として親しくしていければ嬉しいですね。

村松 無二の友、兄弟……。そこまで言っていただき光栄です。

泰門庵住職

堀澤祖門

ほりさわ・そもん

昭和4年新潟県生まれ。25年京都大学を中退して得度受戒。39年十二年籠山行を戦後初めて達成。平成12年叡山学院院長、14年天台座主への登竜門「戸津説法」の説法師を務める。25年12月より三千院門跡門主。現在は泰門庵住職。著書に『君は仏私も仏』(恒文社)『求道遍歴』(法藏館)『枠を破る』(春秋社)など。

失われていく信仰心、大難に直面する仏教

村松 それにしても、堀澤先生の真理を求める探求心にはすさまじいものがありますね。90歳を越えてもなお、難解な量子力学の本をご自身で赤線を引っ張りながら読まれ、分からない部分は納得するまで何度も質問をされる。なかなかできることではありません。

堀澤 村松さんに出逢うまで量子力学のことはまったく知りませんでした。それまで科学といえばいわゆる唯物論的科学でね。要するに人間の精神は脳がつくったものであって、脳が機能を停止すればそこには何もない。科学的に見れば宗教の教えも霊性も何も証明できないというわけです。唯物論的科学は仏教を徹底的に叩いてきた。
例えば、我われは阿弥陀仏あみだぶつの十万億土(極楽浄土)を信じて一所懸命に拝んでいますけれども、天文学で宇宙をくまなく調べても、十万億土はどこにもないではないかと。現代では日常生活のほぼすべてが科学の力で成り立っていますから、誰もが科学を疑うことができません。科学と宗教の整合性をどうつけるのか、科学という圧倒的な大風が吹き、大いに揺れているのがいまの仏教界なんです。
もう一つ大変なのは、これまで大乗仏教の経典はおしゃ様がじかに説かれた真説、「こんの仏説」だとされてきました。伝教大師も日蓮上人も当時のすべての祖師たちは、大乗経典の一言一句すべてがお釈迦様の言葉であると信じていた。ですから、宗教論争をする時にも、どの経典のどこにこう書いてあると、経典の一言一句を根拠にして論争していたのです。
ところが、科学的な考証によって、大乗経典そのものが「金口の仏説」ではないことが学問的に明らかになってきた。その結果、経典を媒介にお釈迦様と繋がることが難しくなり、宗教の根源である信仰心がぐらついていきました。
では、経典はどうなったかといえば、お釈迦様と繋がる信仰の対象ではなく、学問の対象、文献という「モノ」になっていった。文献として経典を読んでも、そこに信仰心は生まれないでしょう。

村松 唯物論的科学の影響で、宗教者でも神仏の存在、教えを信じられなくなっているのですね。

堀澤 ええ。私はそれを肌身で実感してきて、大変な危機感を抱いてきました。いくらお寺に経典や仏像がたくさんあっても、肝心の信仰心がなければお寺は〝がらんどう〟ですよ。まさに、いま仏教は大難の時を迎えているんです。

開華GPE代表理事

村松大輔

むらまつ・だいすけ

昭和50年群馬県生まれ。平成10年東京大学工学部を卒業し、父親の経営する会社に勤務。25年脳力開発塾「開華」設立。量子力学をベースに「自分発振」による脳力開発を提唱。現在は小学校から大学、企業などでの研修、セミナーでも活躍。著書に『「自分発振」で願いをかなえる方法』『最新理論を人生に活かす「量子力学的」実践術』(共にサンマーク出版)など。