2026年8月号
特集
時務を識る者は
俊傑に在り
インタビュー②
  • ブランドプロデューサー柴田陽子

ブランドは
細部に宿る

ブランドプロデューサーとして渋谷ヒカリエやローソンの「Uchi Café SWEETS」シリーズを成功へと導いてきた柴田陽子さん。22年前に立ち上げた柴田陽子事務所、通称「シバジム」は営業活動を一切していないのに、仕事の依頼が後を絶たないという。トレンドが目まぐるしく移り変わる現代社会の中で、なぜ成果を出し続けられるのだろうか。柴田さんの仕事の流儀に迫る。

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    ブランドプロデューサー

    柴田陽子

    しばた・ようこ

    昭和46年神奈川県生まれ。大学卒業後、外食企業に入社し、新規業態開発を担当。その後、化粧品会社での商品開発やサロン業態開発などを経て、平成16年「柴田陽子事務所」を設立。ブランドプロデューサーとして、コーポレートブランディング・店舗プロデュース・商品開発など多岐にわたる業務を請け負う。「グランツリー武蔵小杉」総合プロデュースの他、「渋谷ヒカリエ」レストランフロア、ローソン「Uchi Café SWEETS」、ルミネ、日本交通などのブランディングに携わる。著書に『勝者の思考回路』(幻冬舎)など多数。

    美しいブランドをつくりたい、つくれる会社になりたい

    ──柴田さんが率いる事務所、通称「シバジム」は渋谷ヒカリエを筆頭に、様々なブランディングを手掛けてこられたそうですね。

    私たちは「Make a Beautiful Brand」というビジョンの下、400を超える企業や商品のブランディングに携わってきました。社員数30名、うち9割が女性という小さな会社ですが、2024年には創業20年を迎えました。
    私たちがここまでやってこられたのは、シバジムらしい「イズム」があったからだと思います。シバジムでは社員全員で共有したい価値観をビジョンやバリューとして言語化しています。中でもシバジムの哲学を明示しているのが、フィロソフィーにある「道の真ん中を歩こう」です。
    仕事でも人生でも、日の当たる道の真ん中を大手を振って歩いていきたい。これを私たちの変わらぬ信念として、どんな時でもこの解決策は正攻法なのかを自問自答し、隅々まで追求してきました。
    そしてこの精神を胸に私たちが実現したいのは、先ほど述べたビジョンにあるように、「美しいブランドをつくりたい、つくれる会社になりたい」という夢です。

    ──美しいブランドとは、どういったものでしょうか。

    本質的な価値があり、長くお客様に応援してもらえるもの。時代やマーケットを捉え、成功を得られるものと定義しています。
    そもそもブランドとは何か。例えば、エルメスやシャネルといったファッションブランドには、そのかたまり自体にファンがついています。新商品を出した時に他社と比較されるわけでもなく、信頼や応援で買ってもらえる。要するに、人々がその価値を感情的に理解し、スペックを超えた判断基準で選ぶものがブランドであり、その状態に導くことをブランディングだと私は考えてきました。
    よく勘違いされるのですが、ブランディングは広告代理店のそれとはまったく違います。面白い広告で人々の注目を一時的に集め、商品やサービスの購入を促すのが広告代理店の仕事。一方で私たちが目指すのは、企業の収益の柱となる持続性のあるブランドづくり。つまり、対象となるものの本質的な価値を中心に据え、長く続けるほどに愛されるブランドを生み出すのが私たちの仕事なのです。

    ──一時的な成果ではなく、長く愛される価値を生み出していくと。

    ええ。こうしたブランディングを行うために、私たちは3つの分野で仕事をしています。1つ目が、会社をブランドと捉えるコーポレートブランディング。2つ目は、化粧品やアパレルなどの商品開発を行うサービス・プロダクト系ブランディング。そして3つ目が、商業施設やホテル、街といった場所にひもづくブランドを担う開発系ブランディングです。
    私はノーと言わないことを信条に、いただいた仕事は可能な限り引き受けてきましたが、社員には「仕事を一度いただいて喜ぶな」とも伝えています。同じクライアントから何度もお仕事をいただいて初めてお役に立っているのだと。その姿勢で仕事を進めてきたことが、信頼関係の構築につながっているのかもしれません。おかげさまで、大企業からご夫婦で営まれている小さな商店に至るまで、様々なクライアントからご依頼をいただき、1年間で約30件のプロジェクトに取り組んでいます。