2018年4月号
特集
本気 本腰 本物
対談
  • 日本政策研究センター主任研究員岡田幹彦
  • 横浜市公立中学校教諭服部 剛
感動の日本史

本気・本腰で生きた
歴史の偉人たちに学ぶ

日本の歴史をひと度紐解けば、自らに与えられた使命に誠を尽くし、「本気 本腰 本物」の人生を生きた有名無名の無数の偉人たちに出逢うことができる─。それぞれ50年、30年以上にわたって日本の偉人たちに向き合ってきた岡田幹彦氏と服部 剛氏に、その知られざる感動の物語、そして歴史の人物に学ぶことの尊さ、大切さを縦横に語り合っていただいた。

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人生を変えた偉人との出逢い

服部 随分、ご無沙汰しております。以前、岡田先生の歴史の勉強会にお邪魔させていただいた際には、大変お世話になりました。

岡田 いえ、こちらこそいろいろとありがとうございました。服部先生も大活躍何よりです。

服部 2018年56歳になりますが、おかげさまでまだ現役でやっています。あと5年は現場で子供たちに歴史を学ぶ大切さを伝えていきたいなと思っています。

岡田 それは素晴らしいですね。

服部 きょうは「本気 本腰 本物」というテーマで、岡田先生と歴史の偉人たちについてお話ができるということで、本当に楽しみにしておりました。岡田先生はもうお若い頃からずっと歴史に向き合ってこられて……。

岡田 ええ。私は子供の頃から何となく歴史が好きでした。歴史小説に始まり、様々な歴史書に接してきたんですが、つい最近読んだ藤原正彦さんの著書の中に、次のようなことが書いてありまして、なるほどと思いました。
「人間が直接経験できる世界は余りにも狭い。その実体験を補って余りあるものが読書。私たちが家族以外に真に心を通い合わせられる相手は、一生のうちせいぜい2人か3人。ところが書物の世界では無数の人物、無数の登場人物との間で深い心の交感ができる」
藤原さんのおっしゃることはまったくそのとおりだと思います。私も歴史の偉人たちの物語に、もう50年やみつきで、本気・本腰で生きた人たちに感動してきました。

服部 50年、歴史の中の人物たちと語らってこられたと。

岡田 物好きなんです(笑)。服部先生は、どういったきっかけで歴史が好きになったのですか。

服部 私の場合は母の影響が大きいですね。小学生の時に「これ読んでごらん」と、母から渡されたのが、野口英世の子供向けの伝記だったんです。幼いながら、野口英世の生き方に非常にかれまして、歴史の偉人の話ってこんなに面白いんだと思ったんですね。
それ以外にも、母は会津の出身なものですから、幕府軍と明治新政府軍とが戦った「戊辰ぼしんえき」の話などをよくしてくれました。

岡田 あぁ、お母様が。

服部 長じて歴史をテーマにした小説をいろいろ読むようになったんですが、日本にはこんなにすごい歴史の人物がいるのかと、もう感動の連続でしたね。それで大学進学後は、取りかれたように歴史、特に日本史の勉強をするようになりました。結局やみつきになってしまい、歴史を仕事にまでしちゃったという感じです(笑)。

日本政策研究センター主任研究員

岡田幹彦

おかだ・みきひこ

昭和21年北海道深川生まれ。國學院大學中退。学生時より日本の歴史・人物の研究を続け、月刊『明日への選択』に数多くの人物伝を連載するとともに、全国各地で歴史講座や歴史講演会を行う。平成21~22年「元気のでる歴史人物講座」を連載(103回)。現在、日本政策研究センター主任研究員。『親日はかくして生まれた』(日本政策研究センター)『日本の誇り103人』『日本の偉人物語1』(ともに光明思想社)など著書多数。

人々を魅了する偉人たちの共通点

服部 岡田先生はどのような歴史の偉人に惹かれてきましたか?

岡田 私はやはり、激動期、国難の時代に生きた偉人ですね。
まず戦国時代です。我われの時代の歴史小説家では、吉川英治や山岡荘八、司馬遼太郎らが有名ですが、彼らの作品の題材は戦国時代が多いですから、私もそれらの小説を熱心に読んできました。
そして、近代では明治維新や日露戦争といった国難の時代。そうした危機の時代を生きた偉人たちの生き方は、文句なしに面白い。

服部 国難の時代を生きた偉人。

岡田 あとは、世のため、人のため、利他の心で生きた偉人。一つのこと、あるいは前人未到のことを、長年たゆまず努力してやり遂げた偉人に惹かれてきました。
もう一つ、芸術にも興味がありまして、文化史に名を残した偉人や作品にも親しんできました。

服部 例えばどんな人物ですか。

岡田 日本画家なら、雪舟せっしゅうとか横山大観たいかん。他にも能の世阿弥ぜあみなど数多いですが、年とともに日本の芸術文化がいかに素晴らしいか痛感しています。
自分が惹かれてきた偉人の共通点としては、3つあると感じています。1つは誠の心を持つ人格・品性において立派な人。もう1つは志の高さ、強さ。3つ目は、いかなる困難にも負けない不屈の精神力、忍耐力、根気です。
服部先生はいかがですか。

服部 私が歴史小説に本当にはまっちゃったのは、先ほど岡田先生もおっしゃった吉川英治の一連の小説で、中でも『宮本武蔵』なんです。自分が空手や柔道をやっていたこともありますが、宮本武蔵の一つの道を究めんとする生き様に、すごく惹かれたんですね。
年寄り臭いですが、既に高校生の時に「求道ぐどう者になりたい」と本気で思っていましたから(笑)。

岡田 高校生で。それはすごい。

服部 武蔵の生き様を通じて己を高めていくことの大切さを学んだのが一つ。そして、柔道なり、空手なり、歴史の勉強なり、己を高めようと努力し続けていると、それが自分の世界のことだけに留まらず、世のため、人のために役に立ちたいという思いと重なってくることに気がついたんですね。
それでだんだん世間に目が向かっていって、学校の教師の道を目指したということもあります。

岡田 あぁ、そうですか。

服部 ですから、私も岡田先生と同じく、志というのはすごく大事だなと思ってきました。武蔵のような求道者ならば、天から与えられた己の資質や役割をしっかり自覚して、高い志を掲げ、ひたすらそこに向かって歩んでいくと。
あと、私が惹かれてきた偉人の共通点は勇気のある人、自分の正義を貫いた人です。もちろん偉人たちも内面では悩んだりすることもあるんですが、それでも前に突き進んでいく勇気、本気さに非常にあこがれ、惹かれてきたんです。

岡田 それは私も全く同感です。

横浜市公立中学校教諭

服部 剛

はっとり・たけし

昭和37年神奈川県生まれ。学習塾講師を経て、平成元年より横浜市公立中学校社会科教諭となる。元自由主義史観研究会理事、現・授業づくりJAPAN横浜(中学)代表。著書に『先生、日本ってすごいね』(高木書房)『感動の日本史』(致知出版社)などがある。