2019年1月号
特集
国家百年の計
私の提言⑥
  • 森林インストラクター神座侃大

めいしょくにあり」

約30年間、ボランティアで森林を守り続ける人がいる。神座侃大氏78歳。長年自然とともに生活してきた神座氏は「人類は滅亡の危機に瀕している」と警鐘を鳴らす。生態系の変化や生命の進化論を紐解き気づいた地球環境の現状と課題について、私たち一人ひとりにできる解決策と合わせてお話しいただいた。

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    気づいた時には既に手遅れ

    森林インストラクター、環境カウンセラーとして30年近く活動する中で、強く思うことがあります。「環境問題は残念ながら、気がついた時には既に手遅れである」ということです。歴史を紐解ひもといても、世界的な薬害事件であるサリドマイド事件、富山のイタイイタイ病(後に新潟でも発生)、熊本の水俣みなまた病、三重の四日市ぜんそくなどはいずれも、症状が現れ問題に気づいた時点で、既に汚染は広範囲に浸透していました。

    近年懸念されているマイクロプラスチック汚染も同様です。河海かかいに流れたプラスチックごみなどが壊れてできる直径五ミリ以下の小さな粒子がこれまで世界各地の水道水や塩、魚などで検出されてきましたが、2018年には遂に、日本を含め8か国で人間の体内に入り込んでいることが確認されました。人体に及ぼす影響は現在調査段階であるものの、マイクロプラスチックによる水道水の汚染が世界的に広がっていることは大きな懸念材料です。

    このように、世界が急速な経済発展を遂げる一方で、地球はあちらこちらで悲鳴を上げています。

    ジャーナリストの立花隆さんが1984年に出版した『文明の逆説』という興味深いフィクションがあります。あるハワイの博物館に「人類の墓」が建てられ、こう刻まれているというのです。

    「この種属は2万年前に生まれ、非常に繁栄したが、自らのつくりだした廃棄物と有害物と人口のために、2030年に滅びた」

    あくまでも立花氏の空想ですが、実際にそうなりかねない現実を思うと、危機感を強くせざるを得ません。

    また、アインシュタインは「仮に第4次世界大戦が勃発ぼっぱつすることがあれば、石と棍棒こんぼうで行われるだろう」と述べています。第3次世界大戦は核戦争に発展し、人類は滅びる。そのため、次の戦いは原始的なものに戻ると予測しているのです。

    アインシュタインは「地球にミツバチがいなくなれば、人類は4年と持たないだろう。環境が人類の生存を許さなくなる」とも言っています。原因は明らかではありませんが、アメリカでは数年前、ミツバチが大量に失踪しっそうする蜂群崩壊ほうぐんほうかい症候群が実際に起きました。ミツバチが受粉を媒介しなくなってしまったら、植物の生育に致命的なダメージを与えるのは必至です。それは人類の生存とも密接に関わってきます。

    森林インストラクター

    神座侃大

    じんざ・まさひろ

    昭和15年埼玉県生まれ。38年中央大学法学部を卒業後、セコニック入社。45年神座糸店入社。平成3年森林インストラクター、8年環境カウンセラーの資格を取得。14年第3回さいたま環境賞受賞。