2022年8月号
特集
覚悟を決める
対談
  • フォーバル会長(左)大久保 秀夫
  • アチーブメント社長(右)青木仁志

覚悟からすべては始まる

情報通信業界のリーディングカンパニーとして知られるフォーバル。日本を代表する人材教育コンサルティング企業のアチーブメント。それぞれの会社を創業した大久保秀夫氏と青木仁志氏は15年来の親交があり、お互いに尊敬し合っているという。共に波瀾万丈な少年時代を過ごし、裸一貫で起業。幾多の試練を乗り越え、今日の発展の基礎を築いてきた。経営者としての覚悟の根底にある思いとは何か。二人のリーダーの体験とそこから掴んだ法則に学ぶ。

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共感と尊敬で繋がる

青木 私はちょうど今年(2022)、社会に出て50年、会社を創業して35年を迎えました。そういう節目に素晴らしい月刊誌『致知』で尊敬する大久保さんとこうして対談の機会をいただけて光栄ですし、これまで一所懸命やってきてよかったなと感じます。

大久保 こちらこそ本当にありがたい限りです。振り返ると、青木さんとはもう15年くらいのご縁ですね。どういう経緯で出逢ったのか忘れてしまったんですけど、いまでもはっきり覚えているのは青木さんの学ぶ姿勢です。
お会いするたびに次から次へと質問しては全部メモを取られる。経営者自らが謙虚な気持ちで貪欲どんよくに学ぼうとする姿勢が半端じゃなくて、素晴らしいと思いました。人や書物から様々なことを吸収して体系化し、それを皆さんにアウトプットされている。まさに青木さんは生きた教育をされている方だなと尊敬しています。

青木 大久保さんは私より1学年先輩で、最年少かつ最短(共に当時)となる34歳の若さ、創業からわずか8年2か月で会社を上場されましたね。日本の通信をまさに変革した挑戦者として、かねて一目置いていました。
お付き合いしていていつも感じるのは、動機の純粋性というか、損得ではなく大局に立ち、人を大切にする生き方にすごく共感を覚えますし、尊敬しています。あとは、長い物に巻かれるタイプじゃない(笑)。迎合せずに言うべきことはハッキリ言う。自分の信念を貫き通す。そこにもかれますね。

アチーブメント社長

青木仁志

あおき・さとし

昭和30年北海道生まれ。10代からセールスの世界に入り、国際教育企業ブリタニカ、国内の能力開発&人材開発コンサルティング研修企業を経て、62年32歳でアチーブメント設立。平成22年から3年間、法政大学大学院政策創造研究科客員教授として「経営者論特講」の講座を担当。著書は35万部のベストセラーとなった『一生折れない自信のつくり方』シリーズをはじめ62冊ある。最新刊に『経営者は人生理念づくりからはじめなさい』(アチーブメント出版)。

打倒電電公社を掲げて

大久保 僕が25歳で新日本工販(現・フォーバル)を起業したのは、お金もうけのためじゃないんです。当時は電電公社(現・NTT)が独占体として日本の通信をぎゅうっていて、「こんなのおかしい」「許せない」と。その怒りからダメで元々、よし一番大きな相手に挑んでやろうということで会社をつくった。無謀ですよね。

青木 巨大企業を相手に一人闘いを挑むというのは、なかなかできることではありません。

大久保 資本金100万円、社員一人でしょ。片や32万人の職員をようする半官半民の電電公社でしょ。その時25歳の僕が「電電公社をぶっつぶす」と言ったら、もう誰も相手にしてくれなかった。でも、僕には絶対にできるという自信があったんです。
電話機は電電公社から借り受けて使用するのが私たち一般人の常識でしたが、実際には、電電公社の電話機を1台レンタルすれば、2台目以降は他の民間の電話機を使っていいという法律になっていました。そこでまずビジネスフォンの販売に初めてリースを導入し、電電公社のレンタル料よりも月々の料金を安く設定したんです。
とはいえ、うちのような零細企業を信用するお客様はほとんどいません。そこで不安を解消するために、業界初の「10年間無料保証サービス」を考案しました。1年間保証が当時の常識だったので、10年間無料保証をメーカーから取りつけるのは至難のわざ。ほとんど門前払いで、話すら聞いてもらえない。しかし、めげずに何度も何度も電話を掛け、時に手紙を書き、飛び込みで訪問する。その地道な努力が実り、数か月間かけて味方につけていきました。
リース販売と10年間無料保証、これまでにないサービスが大変な反響を呼び、僅か1年で業界首位の地位を確立し、5年後に電電公社と民間企業の販売台数が半々となり、独占をかいできたんです。上場したのも、要するに電電公社はものすごく信用がある。民間企業には信用なんかない。信用を得るには上場が唯一の方法だったということです。

青木 大久保さんはどんな時でも「世のため人のために」というのが行動基準になっていますよね。

大久保 おかげさまで今年創業42年を迎え、国内外合わせたグループ会社は32社、連結での売上高は515億円、経常利益は28億円、従業員は2,000名を超えています。

フォーバル会長

大久保 秀夫

おおくぼ・ひでお

昭和29年東京都生まれ。52年國學院大學卒業後、婦人服メーカー、外資系教材販売会社を経て、55年25歳で新日本工販(現・フォーバル/東証プライム市場上場)設立、社長就任。63年日本最短記録、史上最年少(共に当時)で店頭登録銘柄として株式を公開。平成22年より現職。公益資本主義推進協議会代表理事、東京商工会議所副会頭など、様々な要職も務めている。著書多数。最新刊に『勝ち続ける社長の教科書王道経営8×8×8の法則』(ビジネス社)。