2021年10月号
特集
天に星 地に花 人に愛
インタビュー②
  • 「8・12連絡会」事務局長美谷島邦子

9歳で逝った息子へ

絵本に込めた母の祈り

昭和60年8月12日、520人の命を一瞬にして奪った日航ジャンボ機墜落事故が発生した。世界の航空史の中で最多の犠牲者を出したこの事故で、美谷島邦子さんは次男の健さんを失った。小学校3年生、初めての一人旅。送り出した美谷島さんの後悔は尽きなかった。以来36年、多くの遺族が集まる「8・12連絡会」の事務局長として会報や文集をつくり続け、講演活動で遺族の声を届け、紙芝居や絵本で命の大切さを訴えてきた美谷島さんが見つけたものとは——。

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36年という歳月の重さ

——絵本『けんちゃんのもみの木』を拝読しました。日航機事故で息子さんを亡くされた美谷島みやじまさんの深い祈りのようなものが伝わってきました。

ありがとうございます。2021年も8月12日が近づいてきましたので、私も改めて読み返してはけんのことを思っているところです。
8月12日に向けて、ここ1か月くらいは会報づくりでバタバタしています。この「おすたか」という会報は36年前に創刊号を出して今回で114号になります。私は「8・12連絡会」の事務局長を務めているので最初から関わっています。昔は毎月のように出していましたが、いまは年に2回くらいになりました。でも、いまだに「おすたか」が届くと、玄関でそのまま見入ってしまうというご遺族もおられます。

——連絡会にはどのくらいの方が参加しておられるのですか?

連絡会ができた当初は280家族が会員になっていました。いまでも140家族と連絡を取り合っています。36年というと、子供が育って、孫が生まれて、というような歳月ですよね。2021年も12日に御巣鷹おすたかに登るのですが、挨拶をしてすれ違うだけでも「ああ、あの子の家族はこうなっているんだな」って分かるんですよ。そういう関わり合いを36年間続けてこられたのは幸せなことかもしれませんね。

「8・12連絡会」事務局長

美谷島邦子

みやじま・くにこ

昭和22年生まれ。60年8月12日に起きた日航ジャンボ機御巣鷹山墜落事故で次男・健さんを亡くす。遺族でつくる「8・12連絡会」事務局長。精神保健福祉士。精神障がい者支援施設を運営、理事長を務める。国土交通省・公共交通事故被害者等支援懇談会委員。著書に『御巣鷹山と生きる』(新潮社)『けんちゃんのもみの木』(BL出版)など。