2024年1月号
特集
人生の大事
インタビュー③
  • 琉球舞踊重踊流宗家、人間国宝志田房子

舞い道一筋
重ねたる八十路

琉球王朝時代に王族や国賓をもてなす芸能として確立された琉球舞踊。この希少な伝統文化への長年の貢献が認められ、琉球舞踊で初となる人間国宝に認定されたのが志田房子氏である。3歳で入門し、八十路に入ったいまも舞台に上がり続ける志田氏。この稀有なる舞踊家を突き動かすものは何か。一道に懸ける思いに耳を傾けた。

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琉球舞踊の門扉を開いて

──志田さんは、りゅうきゅうよう一筋に80年以上歩んでこられたそうですね。

3つの頃より琉球舞踊を始めて、一日一日踊り続けているうちに、気がつけば80年余りが経っておりました。とにかく24時間、生活の中心には踊りがあって、心臓が自然と動くのと同じように、心のおもむくままに踊ったり作品を創作したり。踊りは私の臓器の一部のようなものですね(笑)。

──琉球舞踊とは、どのような芸能なのでしょうか。

古来、しんじょたちが捧げる祈りの所作を源流に持ち、琉球王朝期に、能楽や東南アジアなどの周辺地域の芸能の影響を受け、宮中で貴人をもてなす舞台芸術として育まれました。とりわけ古典舞踊はみやびやかな紅型の装束を身にまとい、琉球古典音楽に合わせ踊ります。
19世紀末、琉球王朝のしゅうえんと共に、宮中に仕えていた舞踊家らはしゅを離れ、生活のためにせいで興行を営むようになりました。そこで様々な風習文化を取り入れたぞうおどりを生み出し、王朝文化であった琉球舞踊が広く人々にも親しまれるようになったのです。

──長年親交のある上皇ご夫妻も、琉球舞踊に親しんでこられたそうですね。

はい。上皇陛下が東宮様でいらした頃に、琉球文学のご進講をなされていたほかしゅぜん先生よりお声がけをいただき、雑踊りの「はなふう」という作品をご披露したのがご縁の始まりでした。半年前の国立劇場にて公演をした折にも、上皇上皇后両陛下のご鑑賞を賜りました。

──2021年には人間国宝に認定されました。琉球舞踊では初めてのことだと伺っています。

戦後の何もないところから、人生を舞一筋に捧げて、歩み続けてまいりました。琉球舞踊界から初めての認定というのは、私の日々の歩みに対する評価でもあり、琉球舞踊に大きな光を当てていただき、そのもんがようやく開いたなと思う瞬間でもありました。後進の育成はもちろん、この先は琉球舞踊の芸術美を自身に問いながら極めていきたいと心を新たにしています。

琉球舞踊重踊流宗家、人間国宝

志田房子

しだ・ふさこ

昭和12年沖縄県生まれ。幼少より琉球舞踊の大家である玉城盛重に師事。重要無形文化財「琉球舞踊立方」保持者(人間国宝)。7歳で初舞台を踏み、昭和22年沖縄民政府主催の芸能審査会にて資格証明書を取得。深い趣を湛え、琉球舞踊の芸術性を伝える品格ある芸には、文化庁芸術祭芸術祭賞、文化庁芸術選奨文部大臣賞、文化庁長官表彰、旭日小綬章など、多数の栄誉が与えられている。後進の育成に尽力する他、現在に至る琉球舞踊の隆盛の礎を築くなど、斯界の普及発展に努めている。