2018年4月号
特集
本気 本腰 本物
インタビュー③
  • HAJIMEオーナーシェフ米田 肇

一流プロとは
高品質な仕事を
継続して行える人

世界最短でミシュラン3つ星を獲得した料理人・米田 肇氏。誰もが彼のことを「天才」と呼ぶが、その裏には想像を絶するほどの努力があった。小学校の頃に抱いた「一流の料理人になる」という夢を誰よりも本気で追い、本腰を入れて努力し、本物の料理人となった米田氏の今日までの軌跡と仕事の流儀を伺った。

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絶えず食の可能性を探り続ける

——HAJIMEはオープンからわずか1年5か月という世界最短でミシュラン三つ星を獲得され、大変話題になりましたね。あれから2018年5月で10周年を迎えます。

周りの方がよく評価してくださるので、ありがたい限りですが、10年といってもまだ10歳で小学校5年生。やっと読み書き計算ができるようになったくらいです。
開店当初は1万円台のコースを出していましたが、2012年に3万円台に引き上げ、そして10周年を迎える2018年、さらに少し金額を上げて挑戦しようと思っています。それは自分たちの利益確保ではなく、お客様により高品質なサービスを提供するためです。
私たちは誰よりも品質にこだわり、研究開発にお金をかけていて、そうした投資に一層力を入れるために決断しました。大事なのは値段に対して見合った内容を提供することですので、お客様の期待に応えようと皆で奮闘しています。
  
——米田さんのつくるのはフランス料理ではなく、ガストロノミーという分野だそうですね。

これは「美食術」「美食学」と訳されますが、簡単に言うと料理と文化の歴史を考察していくことです。私は食べることをさかのぼっていくと進化論に辿たどりつくと考えていて、人類は環境変化に順応するように食を変化させて発展してきました。このガストロノミーの可能性を広げるためにも、単に料理をおいしく調理するだけに留まらず、宇宙や医療などその他の分野にも貢献したいと思っています。
最近ではコンピューターに味覚を持たせたら面白いんじゃないかとか、様々な未来を探っています。AI(人工知能)やロボットは積極的に取り入れるべきだと考えていて、皿洗いなど人がやって高価なお皿を割ってしまうより、ロボットが正確にやったほうが絶対に安全です。完璧を求められる分野にロボットが入り、開発や研究など失敗をしながら新しいものを発見していく分野こそ人間がやるべきだと思っています。
  
——シェフの域を超え、まるで科学者のような洞察力ですね。

私は自分のことを料理人だとは思っていません。食の持つ可能性をいかに創造できるかを常に考えていて、将来的には厨房ちゅうぼう以外にも研究室をつくり、新しいことをやっていきたいと思っています。

HAJIMEオーナーシェフ

米田 肇

よねだ・はじめ

昭和47年大阪府生まれ。大学卒業後、エンジニアを経て料理の道へ。平成20年大阪府に「HAJIME」を開業。その1年5か月後に世界最短でミシュラン3つ星を獲得。25年「アジアのベストレストラン50」に選出されるなど、世界的な評価を得ている。