2019年3月号
特集
志ある者、事竟ことついに成る
インタビュー①
  • MTG社長松下 剛

すべては恩返しのために

トレーニングギア「SIXPAD」をはじめ、数々のヒット商品を手掛けるMTG。ブランド開発カンパニーを掲げ、この10年で売上高を30倍に急伸させ、昨年7月には東証マザーズ上場を果たした。1996年、25歳で同社を創業した松下剛氏が起業を志したのは、小学校5年生の時だという。そこに込められた思いとは。そして、いかにして世界的なブランドを築き上げてきたのか。

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10年で売上高30倍の成長を遂げた理由

――松下社長が率いるMTGは、美容ローラー「ReFa CARATリファカラット」やトレーニングギア「SIXPADシックスパッド」をはじめ、様々なヒット商品を手掛け、昨年七月には東証マザーズに上場されましたね。

我われはブランド開発カンパニーとして、ビューティー(美容)とウェルネス(健康)の領域でこれまで世の中になかったものを生み出してきました。いまビューティーとウェルネス合わせて、82兆円のマーケットがあると言われています。その中で我われは1兆円企業を目指そうと思っているんです。
この2つの分野は、ニーズが高まっているにもかかわらず、非常に進化していないマーケットでもあります。例えば、鏡台って江戸時代から本質的にはほとんど変わっていません。そこにAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といったテック機能を入れることによって、いままでにない付加価値やサービスを提供できるようになるわけです。

近年、人生100年時代と言われていますから、ビューティー・ウェルネスをテーマに革新的なブランドを創出し、人生100年に貢献しようと。それは外見だけじゃなくて内面も含めてです。
女性は化粧のノリがいい時と悪い時では朝のテンションが違うとよく聞きますけど、それくらい美っていうのは意識に直結し、仕事のパフォーマンスにも影響します。ウェルネスに関しては、平均寿命ではなくて、健康寿命を延ばす。百歳まで生きるとしても、最後の10年を寝たきりで過ごす人と健康でイキイキと過ごす人では、人生の充実度はまったく違う。
私は1996年、25歳の時にゼロからこの会社を立ち上げました。おかげさまで2018年の売上高は600億円を超え、2008年が20億円でしたから、ちょうど10年で30倍に伸ばすことができたんです。

――驚異的な急成長を遂げている要因はどこにあるのでしょうか?

我われは「フィロソフィ」「グループ経営(部門別採算制度)」「事業ビジョン」という三本柱を掲げていて、この3つが相俟あいまって初めて経営が成り立つと思っています。どんなに素晴らしいビジョンを語っても、潤沢な資金が集まっても、それだけで事業はうまくいきません。やっぱり経営者としての心構え、フィロソフィーが重要であると思います。
私は運よく30歳の時に盛和せいわ塾に出逢いました。それまでは情熱と必死さだけでがむしゃらに働いてきたものの、経営について勉強したことがなかったわけです。
盛和塾に入ってみると、そこで稲盛和夫塾長がおっしゃっているのは、テクニカルな話ではなく、もうフィロソフィー一本なんです。例えば、「会社のお金を私物化してはいけない」「利他の心や感謝の気持ちを持って仲間のために尽くす」など、そういうことが分かっていないがゆえに、ダメになっていくケースが非常に多い。ですから、トップが一番心の勉強をしなきゃいけないということを改めて痛感しています。

――トップが誰よりも学び続け、心を高めていくことが重要だと。

もう一つ、我われの強みは何かと言うと、絶対的に信頼できる仲間が多いこと。わずか3名の社員からスタートした会社は、いま気づけば1,500名になりました。
よくありがちなのは、会社が急成長して100億円ほどの規模になった時に、古くから頑張ってくれたメンバーを切り捨て、より能力の高いメンバーに入れ替える。私はこれは嫌だなと。創業期から汗水垂らしたメンバーも、新しい若いメンバーも共に大事にし、地層のような組織にしていきたいという考え方でやってきました。
もしそういうことをしていなかったら途中で崩壊していたでしょうね。絶対的に信頼できる仲間が多いというのは私の誇りですし、今後も人づくりは大事にしていきたいと思っています。

MTG社長

松下 剛

まつした・つよし

昭和45年長崎県五島列島生まれ。63年高校卒業後、デンソー入社。その後、フルコミッションの住宅営業を経て、平成6年23歳で起業し、中古車販売業を始める。8年エムティージーブレイズ(現・MTG)を設立。「ブランド開発カンパニー」を掲げ、ビューティー・ウェルネスの分野で事業を展開する。30年7月東証マザーズ上場。