2017年11月号
特集
一剣を持して起つ
一人称
  • 経営コンサルタント神田昌典

マーケティングで
会社の未来を開く

先進的なマーケティング手法で数多くの企業に活路をもたらし、日本のトップマーケターにも選出された神田昌典氏。劇的な社会変化が進むいま、私たちはいかなる視点でビジネスに臨めばよいのか。会社に新しい命を吹き込む道を伺った。

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顧客獲得が自動化される時代

私が20年にわたり携わってきたマーケティングの世界に、いま驚くべきことが起こっている。

私は1998年に『小予算で優良顧客をつかむ方法』という本を上梓して以来、中間業者を介さず直接見込み客と繋がり、上得意へとステップ式に育成していくダイレクト・マーケティングの手法を提唱してきた。

近年、こうした一連のマーケティング活動がITの進化に伴ってますます洗練され、ついには顧客獲得が自動化されるところにまで至ったのである。マーケティング・オートメーション(MA)がそれである。

ロンドンに本社を置く高級レストラングループ「ハッカサン」は、MAの導入によりメールマガジンの開封率が10%から70%へ急増。700にも上るキャンペーンを運用し、年間来店客50万人、売り上げは100億円に達した。

ブラインドやカーテンを製造販売する「スリーデイブラインズ」は、広告による見込み客の獲得からアフターフォローまでの一連のプロセスをMAによって自動化することで、200人のデザインコンサルタントを高度に組織化することに成功。MA導入から数か月で、顧客当たりの予約コストを79%削減したという。

私は一昨年(2015年)、ラスベガスで開催された「ザ・マーケティング・ネイション・サミット」というビジネス・カンファレンスに出席し、MAを導入したアメリカ企業の実例をマーケティング事業責任者たちから直接聞いた。

その先進的な活用事例には興奮を禁じ得なかったが、一方で日本の企業がアメリカに大きな差をつけられていることも痛感させられ、強い焦りを感じた。こうした高度なマーケティング手法をものにしたアメリカ企業が、日本企業から市場を奪い取るのは、赤子の手を捻るほど簡単だと予想できるからである。

経営コンサルタント

神田昌典

かんだ・まさのり

昭和39年埼玉県生まれ。上智大学外国語学部卒業。在学3年次に外交官試験に合格し、4年次より外務省勤務。その後、ニューヨーク大学経営学修士及びペンシルバニア大学ウォーオンスクール経営学修士(MBA)取得。コンサルティング会社を経て、平成7年米国ワールプール社日本代表に就任。10年経営コンサルタントとして独立。現在アルマクリエイションズ代表。著書に『口コミ伝染病』(フォレスト出版)『2022──これから10年、活躍できる人の条件』(PHPビジネス新書)『稼ぐ言葉の法則』(ダイヤモンド社)など。