2016年8月号
特集
思いを伝承する
インタビュー③
  • 王宮 道頓堀ホテル専務橋本明元

世界と日本の
懸け橋になる

外国人旅行客に日本を好きになってもらいたい——。その思いのもと、日本の文化・おもてなしを体感できるサービスを提供し、人気を集めている道頓堀ホテル。感動と口コミの連鎖が生まれ、稼働率約95パーセントを誇っている。かつて経営不振に陥っていた同ホテルを甦らせ、さらなる発展を築いている橋本明元氏が語った、改革の道のりとホテル経営に懸ける思い。

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日本サービス大賞を受賞しての思い

──このたび第1回「日本サービス大賞」の優秀賞(SPRING賞)を受賞されたと伺いました。おめでとうございます。

ありがとうございます。日本サービス大賞というのは、これまで経済産業省主催で日本の優れたものづくりを表彰するものはあったんですけど、日本はやっぱりサービス業が強い。そういう優れたサービスを提供している企業を表彰しようと安倍首相が言われて、始まったそうです。853件に上る応募が寄せられ、そのうちの31社に選ばれたんです。

──853社の中の31社とはすごいですね。

全日本空輸さんやりそなホールディングスさんといった名だたる企業、尊敬する川越胃腸病院さんなどが受賞する中で奇跡的に選んでいただき、表彰式では安倍首相にもお会いできて、本当に光栄でした。応援し、支えてくださったお客様、業者さん、そして何よりも社員さんやパート・アルバイトさん、家族のみんなに感謝の思いでいっぱいですね。
師と仰ぐ稲盛和夫さんの「謙虚にして驕らず、さらに努力を」という言葉を改めて心に刻み、邁進していきたいと思っています。

──受賞の要因でもあると思いますが、御社は日本のおもてなしを体感できるホテルとして、外国人旅行客に大人気だそうですね。

一つ具体的な取り組みを挙げると、当ホテルの宿泊客の9割以上が外国人なんですけど、そのお客様に日本を好きになってもらおうと、毎日無料で日本の文化に触れるイベントを開催しています。

──毎日、それも無料で⁉

そうです。月曜日はネイルアート。火曜日は食文化のイベントで、握り寿司や餅つきを体験して試食できる。水曜日は着付け。ただ着付けをするだけではなく、着物姿の写真を撮ってポストカードにしてプレゼントしています。木曜日は縁日で、輪投げや手裏剣をやったりする。金曜日はコスプレイベント。
あとは毎晩10時半から屋台を出して、ラーメンを無料で提供しています。生ビールとワインも飲み放題。そういうイベント以外にも、国際電話無料、自転車貸し出し無料、外貨両替手数料無料など、様々なサービスを手掛けているんです。

──とても宿泊したくなります。

イベントや無料サービスをやるのは非常に手間とお金がかかるし、人件費も決して安くはありません。でも、私たちは徹底的に人をかけます。なぜなら、弊社の経営理念は「誠実な商売を通して心に残る思い出づくり」なんですけど、私たちはお客様に思い出を売っているのであって、それには機械的なサービスではなく、人から人へと伝わっていくサービスでないと心に残らないからです。
その代わり、下手な値引きはせずに、単価はやや高めに設定しています。おかげさまで稼働率は95%ほどあり、今年は年末まで予約で埋まっているんです。

王宮 道頓堀ホテル専務

橋本明元

はしもと・みんげん

昭和50年大阪府生まれ。平成10年同志社大学卒業後、川村義肢を経て、13年㈱王宮入社。14年上海大学国際交流学院に留学。その後、シャングリ・ラ ホテル青島などで営業職として勤務し、19年帰国、㈱王宮常務取締役。24年より現職。