2017年2月号
特集
熱と誠
インタビュー②
  • 脳神経外科医加藤庸子

高いところに
登れば、より広く
美しい景色が
見える

脳卒中の中で最も危険とされている「くも膜下出血」。高い確率で死に至るこの病気を未然に防ぐのが、「クリッピング手術」を得意とする脳神経外科医の加藤庸子さんだ。親身になって患者に寄り添い、卓越した技術で手術を行うとともに、発展途上国の教育支援に注ぎ込む情熱には、60歳を超えたいまも、いささかの陰りもない。

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世界最多の執刀数

──加藤先生は脳卒中の原因となる脳動脈瘤にクリップをかけることで血流を断つ「クリッピング手術」を得意とされていて、女性脳外科医としては世界最多の執刀数を誇るとお伺いしています。

執刀数は2,000例をもうかなり超えていると思うんですよ。いまもだいたい年間100例以上はやっていて、週3回のペースですね。
平成26年9月からそれまでセンター長を務めていた藤田保健衛生大学救急救命センターから同大学坂文種報德會病院の院長補佐に変わったことで、環境も随分と変わりました。救命センターは1,500床だったのに対して、ここの病院は約350床なので、職員の方や先生方との距離がぐっと縮まった感じですね。
学長からはこの病院の活性化を任されているのですが、それに加えて以前から行っている発展途上国への医療支援や後進の技術指導にあてる時間も、現地からの要請もあって増えているんですよ。

──いつからそのような活動をされているのですか。

かれこれ25年くらい経ちます。つい最近ですとカンボジアに行って、帰ってきたその日に東京で行われた学会に参加。そして、その日の晩には片道24時間以上かかるブラジルに飛んで、帰国後に出席した学会が終わったのが昨日のことでした。

──かなりハードですね。

今回はかなりハードでしたけど、最近は特に忙しくて現地に滞在できるのは1日だけになることも多いんですよ。それでも院長からは、「病院にいない」とよく怒られていますけど(笑)。いずれ手術から身を引く時が来たら、その時は教育支援にもっと力を入れたいと思っています。

脳神経外科医

加藤庸子

かとう・ようこ

昭和27年愛知県生まれ。愛知医科大学医学部を卒業。名古屋保健衛生大学(現・藤田保健衛生大学)脳神経外科教室の研修医となり、60年脳神経外科医の資格を取得。平成2年世界脳神経外科連盟の副理事長に就任。3年藤田保健衛生大学で脳神経外科医として勤務。18年脳神経外科医として日本初の女性教授に就任。26年9月から藤田保健衛生大学坂文種報德會病院脳神経外科に勤務地を移転し、現在に至る。