2019年5月号
特集
枠を破る
インタビュー③
  • シャークニンジャ日本法人社長ゴードン・トム

商品の持つ強みに
焦点を当てる

英国大使館勤務から一転して日本法人社長就任という異色の経歴を持つゴードン・トム氏。現在はアメリカ家電メーカー大手・シャークニンジャの日本法人を率いて、日本の掃除機市場に新たな風を巻き起こしている。かつてイギリスのダイソンを認知度ゼロの状況から一躍トップブランドに育てた氏は、いかにして日本市場という枠を破る糸口を掴んだのか。豊富な実践例とともにビジネスを成功させるヒントを伺った。

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掃除機市場に見る日本の変遷

——アメリカでシェアナンバー1を誇る家電ブランド「シャーク」の掃除機が昨夏から日本でも発売が始まりました。日本法人のトップとして同社を率いるゴードンさんと日本の掃除機市場との関わりは随分と長いようですね。

早いもので、もう20年以上が経ちます。最初はダイソンの日本法人社長だったわけですが、当時と比べると日本の掃除機市場はすっかり変わりました。
例えば、あの頃は日本の掃除機はほぼ100%が日本製でしたが、いまでは全体の5%くらいがやっとで、あとは全部海外で製造されているのが現状ですね。それに20年前には海外メーカーはごくわずかでしたが、いまは市場全体の2割を占めるまでになりました。
販売台数で比べると20年前は600万台だったのが、最近は900万台に迫る勢いで増えているんです。その一方で取引先の家電量販店はだいぶ少なくなりました。やはりいまはインターネットの時代ですね。以前は買い物客がインターネットで商品を検索しようにも情報がほとんどなかったですし、いまをときめくアマゾンはまだ本屋さんだったわけで、ひと昔前とはすっかり様変さまがわりしました。

——掃除機自体も様々なタイプのものが出てきました。

紙パック式が主流だった日本市場に、紙パックを使わないサイクロン式が登場したのが20年前です。充電式(コードレス)のスティック型が出てまだ10年も経っていませんけど、それがいまでは市場全体の3分の1にまで伸びてきました。ロボット掃除機も随分普及してきています。

——そうした日本の掃除機市場の変遷へんせんを、イギリス人のゴードンさんがずっと見てこられたというのも不思議なご縁ですね。

日本でダイソンの掃除機販売に関わったのは1998年からの約7年間で、後に米国法人のトップを任されると決まった時には、もう日本に戻ることはないだろうと思っていました。
ダイソンを辞めたのは2008年のことですが、翌年にはスウェーデンにある大手家電メーカー・エレクトロラックスの日本法人社長として日本にやって来ることになりましてね。いまはアメリカのシャークニンジャにいるわけで、日本とは何か不思議な縁でつながっているように感じています。

シャークニンジャ日本法人社長

ゴードン・トム

1953年イギリス生まれ。外務省職員として英国大使館勤務を経て、1998年ダイソン日本法人社長に就任。同アメリカ法人社長を経て、2008年母国でコンサルティング会社を設立。2009年スウェーデンのエレクトロラックス日本法人社長就任。2017年アメリカのシャークニンジャ日本法人社長に就任し、現在に至る。