2023年8月号
特集
悲愁ひしゅうを越えて
インタビュー①
  • ワントゥーテン社長澤邊芳明

どんな逆境にも
ポジティブスイッチは
見つけ出せる

ウェブデザインやネット広告を武器に関西のベンチャー企業の雄として名を上げ、現在は現実空間と仮想世界を融合した新たなコンテンツ、体験づくりで脚光を浴びるワントゥーテン。社長の澤邊芳明氏は18歳で頸椎(けいつい)を損傷、四肢不自由となった喪失感と退屈をビジネスで昇華してきた。氏が提唱する、人生を好転させる考え方「ポジティブスイッチ」の源泉に迫る。

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生活も経営も頼むことから始まる

——澤邊さんが24歳で京都に開業されたワントゥーテンは、栄枯盛衰の激しいIT業界で26年の歴史を刻んでこられました。

もうあっという間ですね、あっという間(笑)。今年(2023年)で50歳になりますけど、始めてまだ10年くらいしか経っていないような、まったくのルーキー気分でいます。

——近年では企業から地方自治体、パラリンピック関係事業まで様々な仕事を手掛けられていますね。

非常にありがたいことです。社員はいま110名、コロナで落ち込んだ業績も黒字転換しました。
特に力を入れている事業領域の一つが、分かりやすく言えばソフトバンク社のロボットPepperペッパーの言語エンジン開発のような、AI(人工知能)を活用した体験づくり。もう一つはVR(仮想現実)に代表されるXR(クロスリアリティ)、現実空間と仮想世界を融合した新たな体験づくりです。
つい先日も、きゅうしばきゅうおんていえんを夜間に開放してもらい、歴史ある広大な庭園を色とりどりにライトアップする『旧芝離宮かい ~かぜひかる~』を主催しました。

——車いすで生活されているそうですが、日々どのように仕事を?

18歳でバイク事故に遭って、見ての通り自分の力では1ミリも移動できない体になりました。こうしてしゃべることはできても、頭と肩以外動かないので、食事、トイレ、入浴と、何をするにも必ず家族やヘルパーさんなど誰かのお世話が必要なんです。

——周りの手は借りつつも、精力的に仕事に向き合われている。

私の生活はすべて人に頼むことから始まります。そうしないと何もできません。でも会社を続けてきて気づいたのは、経営も同じで、自分一人ではできないことを社員の皆と一緒に広げていくことじゃないかと。ただし、指示を出すくらいでは人は動いてくれません。私は経営を通じて、自分自身の「ポジティブスイッチ」をオンにし、また社員のスイッチもオンにすることの大切さを勉強させてもらったのかなと思います。

ワントゥーテン社長

澤邊芳明

さわべ・よしあき

昭和48年東京都生まれ、奈良県で育つ。京都工芸繊維大学へ入学直前、18歳でバイク事故に遭う。手足を一切動かせない中、独学でパソコン技術を習得、復学後の平成12年、24歳で1→10〈ワントゥーテン〉デザインを開業。13年大学卒業後、法人化。19年東京オフィス開設。一般社団法人日本ボッチャ協会代表理事も務める。著書に『ポジティブスイッチ』(小学館)がある。