2023年7月号
特集
学を為す、故に書を読む
一人称
  • 英斎塾塾長三木英一
安岡正篤講話録

『活学』に学ぶもの

戦後、政財界のリーダーたちが師と仰いだ東洋思想家・安岡正篤師。その没後40年を記念して師の講話録『活学』が弊社から復刊された。半世紀以上前に話されたものだが、その内容は驚くほど現代に通じる部分が大きい。同書の魅力や読みどころについて、長年安岡師に私淑してこられた英斎塾塾長で全国木鶏クラブ代表世話人会会長の三木英一氏にお話しいただいた。

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戦後の混乱期 憂国の同志に応えて

今年(2023年)は碩学せきがく・安岡正篤先生の没後40年に当たります。この節目に致知出版社から先生の講話録『活学』が復刊されました。先生のけいがいに接することはついぞかないませんでしたが、その教えに長年、しゅくしてきた者として、いまのこの混迷の時代、人間学の精髄せいずいともいえる名著に再び光が当てられたことは慶賀にえません。

この『活学』はもともと安岡先生が戦後、青年有志に請われて話された内容を編纂へんさんしたものです。昭和21年1月、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)は国家主義者28万人を公職追放し、27の国家主義的団体に解散を指令しました。安岡先生が立ち上げられたきんけい学院、日本農士学校もその対象となり、先生ご自身も活動ができないというき目に遭われました。

しかし、安岡先生のもとには、混迷する祖国を憂える全国の同志から「講義を聴かせてほしい」という熱烈な声が相次ぎ、先生もそれに応えて24年に師友会しゆうかいを結成。それはやがて全国師友協会という全国組織となり、安岡教学が広く普及する基盤となりました。

26年に公職追放が解除となると、東京の師友クラブが先生を講師とするしょうしん講座を開催。一方、大阪では27年2月から太平思想研究所のさとる先生らが世話人となって安岡先生をお迎えして先哲せんてつ講座が開かれるようになりました。40年11月に、先哲講座が100回を迎えたのを機に、それまでの講義をまとめたのが『活学』第一編です。

その7年後には関西師友協会の設立15周年を記念して第2編、そして25周年記念の57年には第3編が相次いで出版されました。今般、致知出版社から復刊されたのは最初の第一編で、600ページを超える大部ですが、講話録ですから大変読みやすく、音読すれば往時の安岡先生の息づかいや魂の響きが伝わってまいります。

ちなみにこの3冊から精選された20編が『活学講座』『洗心講座』『照心講座』の3部作として平成22年に致知出版社から出版されていますので、併せてお読みになるとよろしいかと思います。

私自身も関西師友協会が令和2年の暮れに解散した後、それを引き継いだ令和人間塾にて、3部作を36回にわたって1年半講義しましたが、改めて読み返しながら、師恩をみ締めたものです。

英斎塾塾長

三木英一

みき・えいいち

昭和10年大阪府生まれ。東京教育大学文学部卒業(英語学・英米文学専攻)。以来40年間兵庫県で高校教育、教育行政に従事。退職後、次世代の人材育成活動に従事。現在全国木鶏クラブ代表世話人会会長を務める他、英斎塾という人間学の勉強会を主宰。号は英斎。平成6年教育者文部大臣表彰、7年兵庫県教育功労賞、17年春の叙勲にて瑞宝小綬章受章。現在、日本会議兵庫会長、美しい日本の憲法をつくる兵庫県民の会共同代表。兵庫縣姫路護國神社総代会長。姫路市遺族会長、英霊にこたえる会兵庫県本部会長等の役職を務めている。