2017年10月号
特集
自反尽己じはんじんこ
トップインタビュー
  • バレリーナ吉田 都

バレエの道を
一筋に歩み続けて

日本を代表するトップバレリーナ・吉田 都さん。世界三大バレエ団と称される英国ロイヤル・バレエ団をはじめ、イギリスの伝統あるバレエ団で22年間プリンシパルを務めてきた。バレエ一筋42年──。ほとんどが30代半ばで引退を余儀なくされる中、50代を迎えたいまなお現役で活躍し続けている。その秘訣は「自反尽己」の姿勢で打ち込んできた絶えざる努力の日々にあった。

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好きという情熱が原動力

——吉田さんはイギリスの伝統あるバレエ団で22年間プリンシパル(主役)を務め、現在は日本を拠点に活躍されていますね。

9歳でバレエを始めて42年、こんなに長く踊れると思っていなかったですし、踊りたいという気持ちがあっても体力的に難しくなってきますので、50代を迎えたいまもこうして踊れていることは、本当にありがたいなと思います。
バレエって皆さんが想像している以上にハードで、だいたい30代半ばで辞める方が多いんですね。長く続けられても普通は40歳くらい。
  
——そういう過酷な世界で、42年間現役を貫くことができている理由は何だと感じていますか。

やっぱり好きだからここまで続けてこられたんでしょうね。バレエが好きだという情熱が原動力になっている、そこに尽きるかもしれません。一番最初にバレエに触れた時の気持ちっていまだに変わらず持っていて、ワクワク感というか、いつもフレッシュな気持ちでバレエに向き合うことができています。
だから、一つひとつ振り返ると確かに長い道のりを歩んできたなと思う部分もあるんですけれども、気づいたら42年経っていたという感覚のほうが強いですね。
  
——バレエの道一筋に打ち込まれてきたからこそ、そういう心境に至れるのでしょうね。

もちろん年齢を重ねてできなくなるものも増えてきて、例えば2時間くらいの全幕物を踊ることはもう難しい。
けれども、先週末の公演で踊った作品は、周りの人たちから体力的に絶対無理だと言われていたにもかかわらず、踊り切ることができたので、すごく自信になりましたし、達成感を味わうことができました。その道のりは大変なんですけど、鍛えた分だけ報われるのだなと実感しています。

バレリーナ

吉田 都

よしだ・みやこ

1965年東京都生まれ。9歳からバレエを始める。83年ローザンヌ国際バレエコンクールでローザンヌ賞を受賞し、英国ロイヤル・バレエスクールに留学。84年サドラーズウェルズ・ロイヤルバレエ団に入団。88年プリンシパルに昇格。95年英国ロイヤル・バレエ団にプリンシパルとして移籍。以後2010年に退団するまで、数多くの舞台で主役を務める。現在はフリーランスのバレリーナとして舞台に立ち続ける傍ら、後進の育成にも力を注ぐ。著書に『バレリーナ 踊り続ける理由』(河出書房新社)。