2017年4月号
特集
繁栄の法則
インタビュー②
  • ミライロ社長垣内俊哉

人々の共感力が
事業を前進させる

先天性の骨形成不全症という難病を持ちながら、「ユニバーサルデザイン」をビジネスとして定着させた人がいる。ミライロ社長の垣内俊哉氏だ。事業をとおして障碍者も健常者も誰もが認め合って生きる社会の実現を目指す若きベンチャー起業家に、仕事に懸ける思いをお聞きした。

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ハードは変えられなくてもハートは変えられる

──御社の取り組みが、いま広く注目を集めています。

私たちが行う事業の領域はユニバーサルデザインという言葉で表現されます。年齢や障碍の有無にかかわらず、誰もが使いやすい建物や製品のデザインをユニバーサルデザインと呼んでいて、私たちはそのコンサルティングを手掛けているんです。当事者の視点でコンサル業務を行うことで、誰もが快適になり、企業さんであれば収益に繋がる提案を目指しているわけです。
例えば、バリアフリーという言葉は知られていても、実際にバリアフリー化する上でのノウハウとなると、なかなか理解されていません。私たちはその方法を具体的にお伝えするとともに、バリアフリー化したくても予算や時間の関係でできないとおっしゃるお客様には、予算や時間をかけなくてもやれる方法があることをアドバイスします。

──お客様の事情に応じた提案を行っているのですね。

はい。建物などハード面での改善は困難としても、従業員さんの意識一つでカバーすることができます。私たちは「ハードは変えられなくてもハートは変えられる」と言っていますが、その場におけるスキルを従業員さんが身につけておけば、仮に段差にスロープはつけられなくても、障碍者やお年寄りに満足いただけるサポートができるんですね。
2010年の創立当時は建物の改善だけにフォーカスしていましたが、いまでは従業員研修など様々な選択肢を提供できるまでになりました。障碍者やお年寄りとの向き合い方、コミュニケーションのあり方を習得するユニバーサルマナー検定はこれまで2万5,000人の方が受講し、それぞれの分野で活用していただいているんです。
ちょうど東京オリンピック・パラリンピックに向けてユニバーサルデザインの需要は高まっていますし、社会に貢献する絶好の機会だと捉えています。現在七期ですが、ありがたいことに前年を大きく上回る4億円ほどの売り上げを見込んでいるところです。

ミライロ社長

垣内俊哉

かきうち・としや

平成元年岐阜県出身。立命館大学経営学部在学中にミライロを設立。企業や自治体、教育機関におけるユニバーサルデザインのコンサルティングを手掛ける。日本財団パラリンピックサポートセンター顧問。著書に『バリアバリュー』(新潮社)。