いまから1300年以上前に成立したとされる日本最古の歴史書『古事記』には、「稲羽のシロウサギ」「オホクニヌシの国譲り」など日本人に親しまれてきた神話、物語が数多く収められている。しかしそれらに込められた寓意や成立事情には不明な点も多く、その実像はいまだ定まっていない。日本神話の研究一筋に歩んできた千葉大学名誉教授の三浦佑之氏と、小泉八雲研究を通して日本人の生き方を見つめてきた早稲田大学名誉教授の池田雅之氏のお二人に、『古事記』の真実、そこから見えてくる豊かな世界を縦横に語っていただいた。
熊野速玉祭の一つ、御船祭の様子。御船島を廻り、神霊の遷された神幸船を先導して9隻の早船競漕が行われる。同じような祭は東南アジアでも広く見られる ©新宮市観光協会
千葉大学名誉教授
三浦佑之
みうら・すけゆき
1946年三重県生まれ。成城大学大学院博士課程単位取得修了。千葉大学文学部教授を経て、立正大学文学部教授。千葉大学名誉教授。専門は古代文学・伝承文学。2003年に『口語訳古事記』(文藝春秋)で第一回角川財団学芸賞受賞。著書に『古事記講義』(文藝春秋)『古事記のひみつ歴史書の成立』(吉川弘文館)『古事記を読みなおす』(ちくま新書)『NHK「100分de名著」ブックス 古事記』(NHK出版)『出雲神話論』(講談社)など著書多数。
早稲田大学名誉教授
池田雅之
いけだ・まさゆき
1946年三重県生まれ。早稲田大学文学部英文科卒業。明治大学大学院博士課程修了。ロンドン大学大学院客員研究員。専門は比較文学、比較文化論。小泉八雲、T・S・エリオットなど数多くの訳書を手掛ける翻訳家。早稲田大学名誉教授。NPO法人「鎌倉てらこや」理事長を長らく務め、現在は顧問。文部科学大臣奨励賞、正力松太郎賞等を受賞。著書に『NHK「100分de名著」ブックス 小泉八雲 日本の面影』(NHK出版)、編著に『お伊勢参りと熊野詣』『古事記と小泉八雲』(共にかまくら春秋社)『熊野から読み解く記紀神話 』(扶桑社新書)など。