2026年12月号
特集
住するところ
なきを
花と知るべし
インタビュー③
  • 紀伊國屋書店会長高井昌史

読書文化の灯を
点し続ける

新生・荒尾市立図書館に懸ける思い

熊本県の西北端に位置する人口5万人弱の街・荒尾市。この地に、全国から大きな注目を集めている図書館がある。旧館から生まれ変わった新生・荒尾市立図書館に、多数の利用者が訪れ、街の新しいシンボルとして地元に大きな活力をもたらしているという。書店経営者としてこのリニューアル・プロジェクトに参画した高井昌史氏は、いかにして地方の街に光を点したのか。その根底にある読書文化に懸ける思いに迫った。

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    紀伊國屋書店会長

    高井昌史

    たかい・まさし

    昭和22年東京都生まれ。成蹊大学法学部卒業。46年紀伊國屋書店入社。各地の営業所長などを経て、図書館の新設、学術情報のデータベース化などの業務にも携わる。平成5年取締役に就任。常務、専務、副社長を経て、20年社長に就任。27年より会長を兼務。令和5年より現職。学校法人成蹊学園評議員、学校法人都築第一学園理事などを務める。著書に『本の力─われら、いま何をなすべきか』(PHP研究所)『奇跡のプロジェクト 図書館が街を変えた!─新生・荒尾市立図書館の挑戦』(東洋経済新報社)など。

    人口5万人弱の街で累計来館者数百万人を突破

    ――高井会長がリニューアルに尽力された熊本県の荒あら尾お市立図書館は、来館者が急増して街全体も活気づき、全国の自治体から大きな注目を集めているそうですね。

    とにかく本に触れる人を一人でも増やしたい一心で取り組みましてね。おかげさまで開館5年目の今年(2026年)、累計来館者数が100万人を突破しました。
    荒尾市は、熊本県の西北端にある人口5万人弱の街です。図書館の来館者数は2021年度に2万1,773人でしたが、リニューアルした翌2022年度には28万4,244人と、初年度から10倍以上に増えたのです。

    ――新生・荒尾市立図書館は、どんな図書館なのですか。

    市の買い物拠点である「ゆめタウンシティモール」の中に移転されて、当社が指定管理者として運営に携たずさわっています。
    フロアは1,000坪だから、旧館の4倍です。ショッピングモールの中にあり、夜の8時まで開館して利便性を高めたこともあって、県外からもたくさんの方が訪れています。嬉しいのは、小中高生がたくさん利用してくれていて、高校生が小学生に勉強を教える光景も見られるそうです。これは、館内に時間制限なしで利用できる学習室や、読み聞かせができるコーナーを設けたことも奏功していると思います。

    ――地元の教育にも貢献しているわけですね。

    それから、僕が重視したのがデジタル化です。新しい図書館ではこれからの時代を見据すえて、紙の本の充実はもちろん、本や資料をデジタル化して全国に先駆けた本格的なデジタルライブラリーをつくりました。パソコンやスマートフォンを使って、館外からも閲覧することができます。
    小学校との連携も強化して、授業で使う図書の提供、学校用タブレットでの電子書籍も活発に利用してもらっています。遠隔授業やオンラインセミナーを行えるデジタル学習スタジオも併設していて、郷土学習など様々な試みも実施しています。

    紀伊國屋書店と隣り合わせになっている新生・荒尾市立図書館。移転オープン後の来館者数は5年目で累計100万人を超えた