2017年9月号
特集
閃き
インタビュー②
  • 神奈川県公立小学校教諭山田将由

音読で子供たちの
未来を開く

音読を学校教育に取り入れ、子供たちの学力向上や学級づくりに大きな効果を上げているという山田将由氏。自ら創案したユニークな教材や指導法をご紹介いただき、その閃きの源泉となる音読や教育に懸ける思いを伺った。

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学力の基礎基本で学級づくりの軸になる音読

──山田さんは、小学生の指導に音読を積極的に取り入れておられるそうですね。

「自分の強みは何か?」と問われたら、私は迷わず「音読」と答えます。教職に就いた当初から、音読にはそのくらいのめり込んで実践を続けてきました。
日々の授業はもちろん、学級経営、学級開き、授業参観、研究授業など、様々な機会に音読を生かしていますし、授業では、国語を中心として、社会や理科、算数、道徳など、音読できるものがあればどの教科でも行っているんです。

──なぜ、音読にそこまで熱心に取り組んでおられるのですか。

音読は、学力の基礎基本で、学級づくりの軸になると考えているからです。
私はもともと、『致知』でもお馴染みの齋藤孝先生のファンで、先生の本を通じて音読の素晴らしさを知りました。教員採用試験を受ける時も、先生の本に抜粋してあった『走れメロス』『学問のすすめ』『草枕』を音読してから勉強に取りかかっていたんですが、短時間でかなり集中力が増すのを実感していました。それから、東北大学の川島隆太先生が、音読は脳を活性化させることを科学的に実証されたこともあって、音読の効果には確信を持っていたんです。
ですから、私は教職に就いて今日まで11年、「声づくりによる学級づくり」をテーマに子供たちの指導に取り組んできたんです。

──声づくりによる学級づくりをテーマに。

高め合うクラスになるためには、聞き合う力、話し合う力がベースに必要です。発表することや、自分の考えを述べることに苦手意識や恥ずかしさを抱く子は多いのですが、毎日音読することによって、声を出す楽しさを実感できますし、すらすら読めるようになり、暗誦できるものが増えることで自信もついてきます。声を出すことが常時化し、さらに発表機会を設けることで発信力のある子が増え、クラスに活気と一体感が生まれます。私にとって音読は、学級づくりに欠かせないものです。
そのために私はこれまで、音読用の教材を自分でつくるなど、試行錯誤を繰り返しながら実践してきましたが、今年(2016年)になって齋藤孝先生の『楽しみながら1分で脳を鍛える速音読』(致知出版社)が発刊されたのを読んで、この速音読を実践すれば、子供たちもさらに意欲を持って音読に取り組んでくれるに違いないと感じまして、早速日々の音読指導に取り入れているんです。

──速音読の手応えはいかがですか。

速音読は、指定された範囲をできるだけ速く読む音読法ですが、速く読もうとする中で、素早く言葉のまとまりを掴むことができるようになり、また読む範囲の少し先を見る力もつきます。速く読めるようになると、普通の速さで読む時に余裕を持って音読できるようになりますし、脳科学的にも速音読は前頭前野を活性化させる度合いが高いそうで、短い時間で集中力や学習意欲を引き出せるのを感じています。
それから、速音読では読んだ時間を記録します。継続することで時間が短くなり、成長を実感できるのがいいですね。成長の記録が残るというのはとても大切なことで、継続実践に役立つと思います。それにこの『楽しみながら1分で脳を鍛える速音読』には、素晴らしい名文がたくさん紹介されていますから、例えば1週間ごとに読む場所を変えるなどして、年間をとおして体系的に実践することも可能です。とても画期的なテキストを出していただいて感謝しています。

神奈川県公立小学校教諭

山田将由

やまだ・まさよし

昭和54年広島県生まれ。明治大学卒業後、企業勤務を経て、平成18年より小学校教師に。著書に『音読指導入門』(明治図書出版)などがある。