2022年11月号
特集
運鈍根
対談
  • 「中塾」代表(左)中 博
  • 東北福祉大学元特任教授(右)国分秀男

「365人の生き方」の
ドラマが教えるもの

シリーズ累計38万部を突破した弊社書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』と『同・生き方の教科書』。一流プロたちの逸話を1日1話形式で読める永久保存版の本書は、読者や書店員からの反響も大きいが、何よりの特徴は365人の登場者自身からの感動の声である。『生き方の教科書』に名を連ね、同書を深く読み込んでいる国分秀男氏と中 博氏のお二人に、本書の魅力を縦横に語り合っていただいた。

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毎日の習慣になっている「教科書シリーズ」

 国分先生、はじめまして。きょうはよろしくお願いします。

国分 きょうは私が毎日愛読している『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(以下:仕事の教科書)と『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(以下:生き方の教科書)の魅力について語り合えると伺い、喜びいさんで古川(宮城県)から上京してまいりました。
実は実家が商売をしていたため子供の頃の夢が社長になることで、松下幸之助さんは憧れの方だったんです。ですから、『生き方の教科書』に収録されている中さんの話(6月4日)を読んで、長年松下幸之助さんのくんとうを受けられた中さんのお話を伺えることをとても楽しみにしていました。

 私自身は何者でもないのですが、23歳で松下電器に入社し、たまたまご縁で松下幸之助さんのお声を聞ける機会に恵まれました。同期の中でも直々に教えを受けた人はそう多くありませんので、大変運がよかったのです。
私も国分先生のお話(『仕事の教科書』3月12日、『生き方の教科書』4月25日)を読み、宮城県の古川商業高等学校(現・古川学園)女子バレーボール部監督として全国制覇10回というバレーボール史上における快挙を成し遂げられたことを知り、大変感銘を受けました。きょうはその秘訣もぜひ伺えればと思います。
《「教科書シリーズ」とは?》
『致知』の1万本以上に及ぶ対談やインタビューの中から、弊誌主幹と編集部が総力をあげてセレクトした傑作選。稲盛和夫氏、五木寛之氏、王貞治氏、瀬戸内寂聴氏、柳井正氏、山中伸弥氏など365人の各界の一流プロの実話を、1ページ1話形式で収録しました。1年以上に及ぶ制作期間と、『致知』44年間の歴史によって紡がれた、各424ページにわたる永久保存版です。
国分 それにしても、私たちの話も収録していただいたこの「教科書シリーズ」はいい本ですねぇ。月刊誌『致知』と併せて多くの人に読んでほしい本です。
私はね、この本が発売された直後に一度さーっと目を通し、いまは毎朝、前日と当日の2つのページを読むようにしています。私は忘れっぽいので、必ず昨日読んだ話をもう一度読んで噛み締めています。1日2話ずつ、しかも2冊ありますから、毎朝4話読むんです。と言っても、15分ほど時間があれば読めてしまいますから、朝一番の習慣になっています。
昔は真っ先に新聞を読んでいましたが、最近は暗いニュースばかりですので、「教科書シリーズ」を読んで、「よし、きょうもやるぞ!」と気合いを入れてから一日をスタートするように変えました。

 私も当日のページはまず読みますが、それに加えて何か予定の入った日を読むんです。用事がある日にこの分野の方がこういう内容を語っているということは、こういうきざしがあるのではないか……そんなことを考えながら活用させてもらっています。
松下幸之助さんも直感や予兆を非常に大切にされる方で、京都南禅寺横にしんしんあんという別邸を設けて、日常的に思索にふけっておられました。もし松下さんがいま生きておられたら、この「教科書シリーズ」を毎日本当に素直な気持ちで読まれたであろうと思います。

東北福祉大学元特任教授

国分秀男

こくぶん・ひでお

昭和19年福島県生まれ。慶應義塾大学卒業後、京浜女子商業高等学校(現・白鵬女子高等学校)を経て、48年宮城県の古川商業高等学校(現・古川学園)に奉職。商業科で教鞭を執る傍ら、女子バレーボール部を指導。全国大会出場77回、うち全国制覇10回。平成11年には史上5人目の3冠(春、夏、国体)の監督となる。8年から春夏ともに4年連続決勝進出という高校バレー史上初の快挙を成し遂げる。

学校教育で活用すべき生き方の教科書

 本書を初めて手に取った時、私は〝知のプラネタリウム〟のような本であると感じました。1話1話、すべてのページが輝きを放っていて、きょうはどんな話だろうかと楽しみながら読み進められる。有名なグルメレポーターが「○○の宝石箱や~」とよく言っていましたが、本当に364人、マイナス一は私ですが(笑)、すべての話が素晴らしい。読めば読むほど学びがあり、モチベーションを高める最良の本だと思います。学校の教材、あるいは推薦図書にして、単なる道徳書ではなく、この生身の人間の生きた体験談から学んでほしい。

国分 本当に、学校教育の現場で使ってほしいですね。

 登場する方全員が、人生を真剣に生きる中で気がついた真理をありのままの言葉で語っていることも魅力です。この「教科書シリーズ」の中には気づくための言葉が満載なんです。
松下幸之助さんは「気づいた価値は百万両」とおっしゃっていますが、「ああ、そうか」と気がついた瞬間に世界がひらけていく。その気づきはたった一つの言葉からでも得られるのです。そういう意味で、この本は夜空に星がきらめいているように、気づきの宝庫だと思います。

国分 心の持ちよう、モノの考え方がいかに大事か、それが様々な実話を用いて書かれていますよね。私もこの本を読むと、素直さなど人として大事な基本とは何かを教えられます。だからもし「教科書シリーズ」に30代の頃に出逢っていたら、女子バレー部をあと3~5回は間違いなく優勝させてあげることができたと思います。
当時もうぬぼれるな、強欲になるな、油断するな、感謝の気持ちを忘れるなと自分に言い聞かせてはいましたが、やっぱり若かったこともあり、ついその気になってしまうのです。もっと早くにこの本に出合い、日々心を磨く習慣をつけられていたらと思わずにはおれません。

「中塾」代表

中 博

なか・ひろし

昭和20年大阪府生まれ。44年京都大学経済学部卒業後、松下電器産業入社。本社企画室、関西経済連合会へ主任研究員として出向。その後、ビジネス情報誌『THE21』創刊編集長を経て独立。廣済堂出版代表取締役などを歴任。その間、経営者塾「中塾」設立。著書に『雨が降れば傘をさす』(アチーブメント出版)がある。