2020年9月号
特集
人間を磨く
  • 詩人服部 剛
子供は皆、天使

ダウン症の周と共に生きる

ダウン症を持って生まれた周君との日々を詩に綴ってきた服部剛氏。その詩には、周君への限りない愛の眼差しと、人間の苦しみや悲しみへの深い共感が溢れている。絶望と葛藤を経て、周君を「天からの賜物」として受け入れ、人々の心に寄り添う詩を書き続けている服部氏が語る、人間が幸せに生きるために一番大事なこと——。

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漠然と芽生えた詩人への予感

私が詩を書き始めたのは、高校3年の時のつらい失恋体験と、歌手・尾崎豊さんとの出逢いがきっかけでした。

思春期にありがちなことですが、片思いの恋が実らず、「自分はなんて恰好悪い男なのだろう」と悶々もんもんとする中で、尾崎さんの歌に触れ、そのメッセージが自分の魂に飛び込んできたのです。こんなにも感情が込められたメッセージ性の強い歌があるんだ、この人なら苦しい心の内を分かってくれるはずだと、強く胸を揺さぶられたことをいまも覚えています。

尾崎さんに影響を受けた私は、高校卒業後、浪人生活をしながら失恋した苦しさや情けない思いをノートに書き始めました。そのうちに「言葉で思いを表現するってこういうことなのか」「言葉って何だろう」と、言葉そのものに興味が芽生え始め、詩や詩人という存在に対する漠然とした予感、あこがれが浮かび上がってきたのです。

また、尾崎さんが歌っているように、誰かに敷かれたレールでない、自分だけの独自の道を歩みたいとの思いも強くありました。

結局、勉強には身が入らず、大学受験は二度失敗。これからどう生きていけばよいのか、フリーターをしながら詩をノートに書きつける模索の日々が続きました。

詩人

服部 剛

はっとり・ごう

昭和49年東京都生まれ、神奈川県育ち。平成10年より本格的に詩作・朗読活動を始める。日本ペンクラブ会員、日本文藝家協会会員、日本現代詩人会会員、四季派学会会員。詩集に『風の配達する手紙』(詩学社)『Familia』(誌遊会出版)『あたらしい太陽』(詩友舎)『我が家に天使がやってきた』(文治堂書店)などがある。ブログ「服部剛のポエトリーシアター」、フェイスブックなどで詩や思いを綴る他、朗読や講演活動も行っている。