2016年9月号
特集
恩を知り
恩に報いる
  • ちひろ社長、和歌山県倫理法人会会長西廣真治

かけた情けは水に流し、
受けた恩は岩に刻む

エルトゥールル号遭難事件が教えるもの

昨年(2015年)末、日本とトルコの友好125周年を記念して制作され、両国で大ヒットした映画『海難1890』。1890年に起きたエルトゥールル号遭難事件と1985年のテヘラン邦人救出劇の顚末を描いた作品である。故郷・和歌山を活性化したいとの思いで、映画化に向けて奔走した西廣真治氏に、時空を超えて受け継がれる恩送りの真実の物語と、そこからいま私たちが学ぶべきことについて語っていただいた。

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突き上げてくる確信

「終」の字幕が出て、映画『海難1890』は終わりました。照明がついて明るくなった場内にざわめきが膨らみます。

知り合いが寄ってきて握手を求めます。よかったよ。素晴らしい映画だ。おめでとう。投げかけられる言葉に応えながら、私の胸に熱く確かな思いが渦巻いていました。映画の感動もさることながら、この作品を生み出すに至った経緯、その中で紡ぎ出された縁の素晴らしさが私を満たすのです。

縁。真心。そして、恩。これらの言葉が私の中に根づいてきているのを感じます。映画はこれらの結晶だと言えるでしょう。これらの言葉を一人ひとりがしっかりと抱きしめている限り、人間はもっともっと素晴らしくなれる──。その確信がいま、私を突き動かしているのです。

ちひろ社長、和歌山県倫理法人会会長

西廣真治

にしひろ・しんじ

昭和45年和歌山県生まれ。平成7年同志社大学法学部政治学科卒業後、日興證券(現・SMBC日興証券)入社。大阪、東京、ロンドンなどで活躍し、14年父親が経営する日本料理店「ちひろ」を継ぐ。24年NPO法人「エルトゥールルが世界を救う」設立に携わり、理事に就任。和歌山県倫理法人会会長も務める。