2020年6月号
特集
鞠躬尽力
インタビュー②
  • 志摩観光ホテル総料理長樋口宏江

挑戦を続けながら、
ひたすらに歩んだ道

昭和天皇をはじめとする数多くの賓客が宿泊した志摩観光ホテルの第7代総料理長を務める樋口宏江さん。フランス料理界の巨匠・高橋忠之氏のもと、真摯に料理と向き合い腕を磨いてこられた歩みはまさに鞠躬尽力といえよう。G7伊勢志摩サミットの料理を任された際のエピソードを交えて、料理に懸ける思いをお話しいただいた。

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伝統を守りつつも挑戦心を忘れず

——志摩観光ホテルは2016年に開催されたG7ジーセブン伊勢志摩サミットの会場となり注目を集めましたが、その後も様々な取り組みをされていますね。

それまでは「海のさちフランス料理」を主に提供してきましたが、サミットをきっかけに伊勢海老えびあわびなどの食材以外に、鹿やいのししといった地元で取れるジビエや柑橘かんきつ類など山の幸を提供している生産者さんとご縁を頂戴ちょうだいしましたので、それらを使った新たな挑戦もしています。
毎月開催している「伊勢志摩ガストロノミー」と名づけたランチのイベントもその一つです。食材や食文化を考察することをガストロノミー(美食学)と言うんですけど、単に食事をお出しするだけではなく、生産者の方もお呼びして、食材に懸ける思いや地域の魅力をお話しいただいているんです。
食材を生産される方、召し上がる方、そして料理をつくらせていただく者とが同じ場に集い、同じ時を過ごす。こういった機会をつくることで、私たちも生産者さんやお客様のお声を直接伺える貴重な時間になっています。

——素敵な取り組みですね。

他にも、先代や先々代の料理長から受け継いだ料理を守りながらも、新しい料理への挑戦を続けています。何年も前にお越しいただいたお客様から「あの味をもう一度食べたい」とご要望をいただくことは多くありますので、変えてはいけない部分は守りつつ、より満足していただけるよう工夫しているんです。
看板メニューの一つ、「伊勢海老クリームスープ」についていえば、スープそのものは変えませんが、お客様の目の前でスープをおぎして香りを楽しんでいただくなど、ご提供の仕方にアレンジを加え、私なりのこだわりをお伝えしています。

志摩観光ホテル総料理長

樋口宏江

ひぐち・ひろえ

調理師学校卒業後、平成3年志摩観光ホテル入社。20年志摩観光ホテルベイスイート開業と同時にフレンチレストラン「ラ・メール」料理長に就任。26年第7代総料理長。28年G7伊勢志摩サミットのワーキングディナーを担当。29年農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」にて女性初・三重県初のブロンズ賞を受賞。