鞠躬尽力して、死して後己まん——この身を捧げて死ぬまで全力でやり続ける。『三国志』で知られる諸葛孔明の上奏文に記された一文である。この言葉からは、亡主・劉備の志を受け、大国・魏に敢然と戦いを挑んだ男の並々ならぬ決意が伝わってくる。歴史に名高い名軍師の思い、そしてその足跡を、中国の歴史、文学に詳しい渡辺精一氏に伺った(写真:孔明終焉の地・五丈原。一縷の望みを懸け、命尽きるまで戦い抜いた ©時事通信フォト)。
中国文学者
渡辺精一
わたなべ・せいいち
昭和28年東京都生まれ。國學院大學大学院文学研究科博士後期課程単位修得。二松学舎大学講師、朝日カルチャーセンター、早稲田大学エクステンションセンター講師を歴任。『三国志』関連の書籍を数多く手掛ける。著書に『三國志人物事典』『全論・諸葛孔明』(共に講談社)など。