2019年5月号
特集
枠を破る
  • アルマ・クリエイション社長神田昌典

人間学とマーケティング

時代の枠を破る2つの黄金律

新元号も決まり、ポスト平成時代の幕開けはすぐそこに迫っている。第4次産業革命、人口減少、超高齢社会、緊迫する国際情勢――。この大転換期に未来に続く会社をつくるにはどうすればよいのか。日本を代表する国際マーケッターの神田昌典氏に伺った。

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どうなる!? ポスト平成時代

この4月をもって、30年の歴史を刻んだ平成は終焉しゅうえんを迎え、新たな時代が幕を開ける。ポスト平成時代、日本の企業を取り巻く環境はどう変化するのか。その変化にいかに対応し、飛躍へとかじを切るのか。『致知』を読まれている経営者やソーシャルリーダーであれば、これらの問いに心をくだいている方は多いに違いない。

後者の結論を先に申し上げると、企業にとって必要なのは「くうからの創造」だと私は考える。「伝統の未来デザイン」と表現してもよいだろう。これは一体何かと言えば、これまでつちかってきた知識や経験、あるいは組織、地域、国境といった枠を超えてゼロからイチを生み出すことである。ポスト平成時代のテーマと言っても過言ではない。なぜか。主に3つの社会的な背景から説明しよう。

第1は技術的な変化。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)に代表される第四次産業革命、デジタル革命が本格化していく。

世界最大の経営コンサルティングファームであるアクセンチュアの発表によれば、2000年時点でFortuneフォーチュン 500(『Fortune』誌が年一回公開している全米上位500社の総収入ランキング)に選出された企業のうち、半数以上がデジタル変革の遅れによって倒産しているという。恐るべき結果だ。

日本の企業もデジタル変革なくしては生き残れない。だが、一流や大手と呼ばれる企業の現場を数多く見てきて感じるのは、組織の機能不全がいちじるしく、変革に一歩を踏み出せないということである。

具体的には、大企業の遺産ともいえる従来の経営基盤に固執こしつする傾向が強い。その経営基盤を踏襲とうしゅうしながら、クラウド時代に適した新しい経営システムを導入するには莫大ばくだいな資金が必要な上、部署間を横断して改革を推進しなければならず、それだけのリーダーシップを発揮できる人が非常に少ない。さらには、意思決定に関わる人数が多過ぎて、同意を形成するまでに途轍とてつもない時間がかかる。

ゆえに、第4次産業革命が加速するにつれて、大企業よりも志やビジョンを持った中小企業のほうが有利な状況に置かれるだろう。

現在最も優れたクラウド技術はGoogleが無料で提供している。「G Suiteジースイート」を使うと、場所に依存することなく世界中どこでもオンライン会議を開催できる。速記録を取るのも、音声認識ソフトが自動的に文字を書き起こす。翻訳機能の質が向上すれば、同時に複数の言語の書類が共有可能だ。

私どもの会社は東京に事務所を構えているが、奈良や大阪、福岡、ロサンゼルスなどにもスタッフが駐在しており、「G Suite」を活用してミーティングをしている。

働き方改革で残業規制が進む中、やる気のある有能な人はこのようなクラウド上で副業に就く時代になった。人材が足りないとなげいている方は、外に矢印を向けるよりも雇用環境の変化に対応できていない自社のあり方を見つめ直す、発想の転換が急務だろう。

アルマ・クリエイション社長

神田昌典

かんだ・まさのり

昭和39年埼玉県生まれ。上智大学外国語学部卒業。大学3年次に外交官試験に合格し、4年次より外務省勤務。その後、ニューヨーク大学経営学修士及びペンシルバニア大学ウォーオンスクール経営学修士(MBA)取得。コンサルティング会社を経て、平成7年米国ワールプール社日本代表に就任。10年経営コンサルタントとして独立。著書多数。最新刊に『人間学×マーケティング』(致知出版社/共著)。