2024年7月号
特集
師資相承
一人称
  • 歴史作家田中健之

頭山 満と幕末三舟

英傑に学ぶ日本精神の神髄

明治から昭和初期にかけて日本の政財界、外交政策に大きな影響を及ぼした頭山 満。玄洋社の創設に携わり、道義国家日本の建設、アジア諸国の解放と連帯、世界平和の実現に生涯を尽くした。その頭山が私淑し、精神的な支柱としたのが西郷南洲であり、勝 海舟・高橋泥舟・山岡鉄舟の「幕末三舟」であった。玄洋社初代社長を務めた平岡浩太郎直系の曾孫で歴史作家の田中健之氏に、知られざる頭山の実像とその著書である『幕末三舟伝』を紐解きながら、私たちが伝承すべき日本精神の神髄、日本が進むべき道を語っていただいた。

この記事は約16分でお読みいただけます

墓石を前に先人の声を聴く

私は昭和38年、黒田藩士であるとうやまみつる、箱田ろくすけらと共にげん洋社ようしゃを創設し、初代社長を務めた平岡浩太郎直系の曾孫として福岡に生まれました。自分の生まれについて意識するようになったのは小学3年生の時。お盆に両親、親戚たちと曾祖父の墓参をしたのですが、不思議とお墓から自分が将来進むべき道を感じたのです。

ご先祖様や先人の墓参をし、その精神や歴史を探っていくことを「そうたい行」と言いますが、私も小学3年生の時の体験から、墓石に学ぶことを非常に大事にしてきました。お墓の前に黙って座り自分を無にする。そうすると、今回のテーマ「師資相承ししそうしょう」のように、いまは亡き人々が言わんとしたことが直感的に響いてくるのです。

らい、曾祖父や頭山翁がやり遺したもの、理想とした天下国家とは何か。玄洋社、さらには曾祖父の影響を強く受けた大叔父・内田良平が立ち上げた黒龍會の精神、事績、歴史などについて関心を深めた私は、小・中・高・大学と研究に没頭していったのでした。

現在は、敗戦によりGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)に解散させられた玄洋社、黒龍會の血脈道統を継承する者として、関連する論考の執筆や書籍の出版、講演会、私塾の主宰など、にわたる活動に取り組んでいます。

玄洋社は創設後、まもなく頭山翁が指導的立場となりますが、その名を知る多くの人が過激な右翼結社、豪傑の代表的人物のように評します。しかしそれは本来の玄洋社、頭山像ではありません。むしろ頭山翁は黒田武士としての教養と品位を矜持きょうじし、筋を通しながらも極めて優しい人物でした。

本欄では、その頭山翁の生き方、そして著書である『幕末三舟伝』に焦点を当て、先人たちが私たちに遺した精神、日本が進むべき道について考えたいと思います。

歴史作家

田中健之

たなか・たけゆき

昭和38年福岡県生まれ。玄洋社初代社長を務めた平岡浩太郎の曾孫。幼少より玄洋社、大叔父・内田良平が設立した黒龍會の思想と行動に興味を抱き、孫文の中華革命史およびアジア独立革命史上における玄洋社、黒龍會の歴史的、思想的な研究に従事。拓殖大学日本文化研究所附属近現代研究センター客員研究員、岐阜女子大学南アジア研究センター特別研究員、ロシア科学アカデミー東洋学研究所客員研究員。平成20年、黒龍會を再興し会長に就任。『昭和維新』(学研プラス)、『靖国に祀られざる人々』(学研パブリッシング)など著書多数。