2024年1月号
特集
人生の大事
インタビュー①
  • エーワン精密創業者梅原勝彦

一に社員、二に社員、
三四がなくて、五に社員

創業以来、驚異の利益率を出し続ける町工場の秘密

町工場として初の株式上場を果たしたエーワン精密。創業者である梅原勝彦氏は12歳から丁稚として金属加工に携わり、技術力を武器に起業した。経営のいろはを知らぬながら、お客様、社員第一の経営を続けた結果、製造業で利益率35%超という経営体質が築かれたという。その梅原氏に、今日までの歩みを振り返りつつ、仕事や人生で大切なことを語っていただいた。

この記事は約11分でお読みいただけます

利益は毎月でなく毎日チェック

──梅原さんが創業したエーワン精密は、製造業の中で利益率の高さが群を抜いていると伺いました。まず、どのような製品をつくっているのでしょうか?

主力商品はコレットチャックという金属の部品を掴むための工具です。金属加工のせんばんに不可欠で、消耗品だからおかげさまでもうけさせてもらってます。創業した頃はカムという自動旋盤の制御装置をつくってて、これもいい部品を安く、速く提供していたから喜ばれてね。
2020年に創業50周年を迎えたけど、従業員3人で始めた会社がいまでは社員は110名になって、売り上げは18億円。コロナ禍でも経常利益率25%前後を維持し、これまでの平均経常利益率は35%を超えている。
町工場の利益率は5%いけば御の字じゃない? だから結構、どうすればそんなに儲かるのかって聞かれることが多いんだけど、儲けっていうのは後から分かることであって、最初から利益を追ってちゃ駄目だよ。やることやって、その積み重ねの結果だから。

──ああ、利益は結果だと。昨年(2022年)、相談役から退かれたと伺いました。

2007年に68歳で社長は後任に譲り、後は相談役として務めていたけど、もう83歳だったからね。社員なんかは僕がいたら喜ぶんだけど、経営陣にとってはやっぱり僕がいるとやりにくいらしいんだ。肩書は相談役だったけど、実質社長は僕みたいなもんだったから、社員も僕のほうを見るし、大きな投資もほとんど僕が決めちゃって。このままだとまずいと思って完全に退きました。

──創業経営者にとって会社は我が子のようだとも言いますね。

そうだね。だから数字はデイリーでチェックしてたよ。「今月は儲かっているか?」と確認するようじゃ遅いの。「きょうは儲かっているか?」の積み重ねだから数字は毎日見ていた。山梨にある工場には週に一度、自分で運転して行って、工場を隅々まで見るの。無駄とケチは違うから、工具の使い方が乱暴になっているとか、そういうのはうるさかったね。

エーワン精密創業者

梅原勝彦

うめはら・かつひこ

昭和14年東京生まれ。小学校卒業後の12歳から働き始め、夜間中学を卒業。40年に兄と共に起業し、45年に独立してエーワン精密を設立。徹底した数値管理に基づくスピード重視の経営によって、創業以来の売上高経常利益率が平均で30%を超える高収益企業に育ててきた。平成16年にジャスダック上場。19年から令和4年まで相談役を務めた。著書に『「速さ」で稼ぐリーダー47のコツ』(日経BP)など。