2019年3月号
特集
志ある者、事竟ことついに成る
インタビュー
  • 東京エレクトロン社長河合利樹

逆境が経営を
大きく進化させてきた

半導体製造装置大手の東京エレクトロンが急成長を続けている。2015年、同社は世界最大手の米企業との統合が白紙になるという事態に直面、産業界に大きな衝撃を与えた。その逆境の中、社の舵取りを担うことになったのが社長の河合利樹氏である。新生東京エレクトロンとして、業績を急伸させてきた河合氏に、これまでの足跡や経営者としての心構え、志についてお聞きした。

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    事業に関わる人たちをハッピーにしたい

    ——貴社の2018年3月期の売上高は1兆1,307億円と5年前の約2倍、連結総利益は1,630億円と2期連続で過去最高を更新されたとお聞きしています。大変な勢いですね。

    ありがとうございます。新しいアプリケーションの登場などで半導体業界が活況を呈していることもありますけれども、やはり世界最先端の技術力に加えて、お客様(顧客企業)からの絶対的な信頼があるからこそ市場成長を超える業績に繋がっていると思っています。
    ご存じのように、従来パソコンやスマートフォンで行っていた情報のやりとりが、IoT(モノのインターネット)時代では、様々な物でも可能となるなど、世の中はどんどん便利になっています。いま自動運転システムや遠隔操作によって医療行為ができるリモートサポートなどが話題になっていますが、これらの技術革新の中核を担っているのが半導体であり、また私たちが手掛ける半導体製造装置です。半導体の技術革新を我われの製造装置で支えていくことで、夢のある社会の発展に貢献し、当社を取り巻く人たちをハッピーにしたいというのが社長である私の切なる思いです。

    一方で、世の中が便利になっていくにつれて携帯電話のバッテリーの小型化など省エネルギーをいかに実現するか、という別の課題も生まれてきています。技術革新に伴って副作用のように派生する様々な課題もまた、最先端技術で解決すべく取り組んでいるところです。
    例えば、現在、半導体はどのくらいの大きさかご存じですか? 実は5ナノメートル、3ナノメートル、2ナノメートルという究極な微細化領域に入ってきています。1ナノメートルが1ミリの100万分の1ですから、どれだけ微細な世界であるかがお分かりいただけると思います。
    高性能な半導体は機器の小型化に限らず、最先端の機器に絶対に欠かすことができません。その半導体をつくる装置にはハードウエア、ソフトウエア、プロセス技術、材料、アフターサービスが求められ、装置産業は参入障壁が高い業界です。これほど高度な技術を持つ会社はおそらく世界でも稀でしょうし、それを現場で支えてくれている優秀な社員たちは当社の貴重な資源であり、私の何よりの誇りです。

    ——優秀なスタッフがいらっしゃることはトップとしてとても心強いことですね。

    私たちの技術力で世の中をどんどん便利にして、そこで得られる利益によって社員や株主様、お客様などのステークホルダーすべてをハッピーにしていく。これが私自身の使命です。そのためにも世界最先端の技術の開発や、アフターケアを含めた最良の技術サービス、これらを持ってこれまで以上に社会に貢献できる会社にしていきたいと思っています。社員たちとともに世の中にないものを常に追求し提供していくことに大きなやり甲斐がいを感じているんです。

    東京エレクトロン社長

    河合利樹

    かわい・としき

    昭和38年大阪府生まれ。明治大学経営学部卒業後、東京エレクトロンに入社。平成22年執行役員、27年代表取締役副社長兼COO、28年代表取締役社長兼CEOに就任。