2026年11月号
特集
夢なき者に
成功なし
インタビュー
  • 佐賀大学特任教授 株式会社ダイヤモンドセミコンダクター最高技術責任者嘉数 誠

ダイヤモンド半はん導どう体たい
が人類の未来を創つくる

人工知能、電気自動車、次世代通信、宇宙開発……私たちの生活を一変させる新しい産業の数々。その根幹を支える〝究極の半導体〟として注目を集めているのが「ダイヤモンド半導体」である。長らく実現困難であった次世代の半導体開発で世界をリードする嘉数 誠氏が、半生を費やして追求し続けてきた夢。そしてその先に描く未来に迫った。

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    佐賀大学特任教授 株式会社ダイヤモンドセミコンダクター最高技術責任者

    嘉数 誠

    かすう・まこと

    昭和36年東京都生まれ。60年京都大学工学部電気工学科卒業。62年同大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了。平成2年同大学大学院工学研究科電気工学専攻博士課程単位取得退学(4年に博士号取得)。日本電信電話入社。在職中に独ウルム大学客員研究員。23年佐賀大学大学院工学系研究科電気電子工学専攻教授。令和元年同大学海洋エネルギー研究センター電力制御講座(併任)。令和6年ダイヤモンドセミコンダクター設立と共に最高技術責任者就任。

    人々の生活を一変させる〝究極の半導体〟

    ――嘉か数すうさんは、ダイヤモンド半導体という次世代の半導体開発で世界のトップを走っておられると聞き、ぜひお話を伺いたく馳はせ参じました。

    わざわざこの佐賀大学までお越しいただいて、ありがとうございます。おかげさまで、2023年にダイヤモンド半導体パワー回路の開発に世界で初めて成功することができました。ただ、これは決して私一人の成果ではなく、たくさんの方々にサポートしていただいたおかげで達成できたものです。

    ――そもそもダイヤモンド半導体とは何ですか。

    ダイヤモンドというと普通は宝石をイメージされると思いますが、その特性を再現した人工ダイヤモンドを、半導体の素材として活用することができましてね。これが私たちの生活を一変させる
    〝究極の半導体〟になるのです。
    例えば、きょうの九州の気温は38℃だそうですが、最近の夏は40℃近い暑さが普通になってきていますね。地球の気温はこの100年で1℃上昇したと言われていますが、体感ではもっと上がっている印象がある。ダイヤモンド半導体は、この地球温暖化問題の解消にも貢献できるんです。

    ――それほどの可能性が。

    半導体には、情報処理を行うコンピュータ用の半導体と共に、電力・電圧を制御するパワー半導体というのがあって、いずれもすごい勢いで需要が伸びています。
    ちなみに、きょうは佐賀まで何で来られましたか?

    ――飛行機でまいりました。

    その飛行機や新幹線、自動車を動かすモーターの電力は、すべてパワー半導体によって制御されているんです。交通機関ばかりでなく、家庭の冷蔵庫、洗濯機、エアコン等々、私たちの生活を取り巻くあらゆるところで使われています。
    ただ、既存のシリコンでできたパワー半導体にはエネルギーのロスがあって、入った電力の一部が熱になって外へ逃げてしまいます。スマホが熱くなったりするのは、電力が損失しているからなんです。
    しかし、ダイヤモンド半導体はこの電力ロスがほとんどなく、シリコンの5万倍の電力を出すことができます。放熱を抑えられて、先ほど申し上げたように地球温暖化の解消にも貢献できるというわけです。
    しかもダイヤモンドは、結晶の結合が強く硬いために、シリコンの33倍の電圧をかけても壊れません。つまり高い電圧でも動作できる。そして材料の中では一番熱を伝えやすく、シリコンの17倍。さらに放射線に当てても壊れないので、宇宙空間や原子炉などの極限環境でも使用できます。こういう様々な優位点から、ダイヤモンド半導体は〝究極の半導体〟と申し上げているのです。

    嘉数氏が世界で初めて開発したダイヤモンド半導体パワー回路。電気自動車、原子力、通信衛星、次世代通信6G、AIデータセンターなど、次世代技術のエネルギー効率を劇的に変え、私たちの生活を大きく変える可能性を持つ。