2021年6月号
特集
汝の足下を掘れ
そこに泉湧く
  • 「憲法十七条」市井研究家永﨑孝文
日本人の精神の源流

「十七条憲法」を紐解く

「十七条憲法」という名は知っていても、そこに書かれた内容や言葉の背景を知る人は少ないだろう。市井研究家の永﨑孝文氏は15年以上に亘り「十七条憲法」策定の実相を掘り下げ、各条文から説み取れる意義を今回、弊社より上梓した『教養として読んでおきたい「十七条憲法」』に纏めた。考察の過程で見えてきた〝日本人のこころ〟を交えて憲法のあらましを解説いただく。

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「人生三分の計」を積極的に生きる道標

私は長年「十七条憲法」(『日本書紀』記載は「憲法十七条」)を考察する中で、1つの思いを抱いてきました。それはこれからの日本を背負って立つ青壮年の皆さんにぜひ「十七条憲法」について深く知ってほしいという思いです。

私たちの人生は大局的に3つに分けてとらえることができます。最初は両親や師友など多くの人のお世話になって生きる〝第1の人生〟、次いで仕事を通じて世に貢献する〝第2の人生〟、そしておのれの欲するところに従って生きる〝第3の人生〟。

仮に第1の人生でつまずいたりいじめにあったとしても、また第2の人生が左遷や病気療養の人生であったとしても、第3の人生がよいものであれば、きっとその人の人生は満足のいくものであるに違いありません。

この第3の人生をいかに積極的に生きるかは、第2の人生をいかに誠実に生きるかにかかってきます。その第2の人生を誠実に生きる心構えや、そのための智慧ちえ・知識をはぐくむために第1の人生があります。したがって、第1の人生では他人との比較にこだわる偏差値教育ではなく、「我が人生のものさしを見つけ出すための基本的思考力」を養えばよいのです。

ここで大事なことは、3分された人生の意義をどれだけ分かって〝いま、その時〟を生きるかであり、「ああ、俺(私)の人生満足だった」と言えるかどうかは、究極的には第3の人生をいかに生きるかにかかっているということです。それが「人生三分の計」です。

もう1つ、私はここで「一燈照隅いっとうしょうぐう」という言葉を挙げたいと思います。1人が1つの燈となって周りを照らしていく。この一燈がやがて縁を通じ人脈を通じて少しずつ広がっていく様を碩学せきがく・安岡正篤まさひろ師は「一燈照隅、万燈照国ばんとうしょうこく」と教示されました。ここで大事なことは一燈となる人物の出現をただ待つのではなく、自らが一燈となる覚悟を持たなければならないということです。

この「人生三分の計」と「一燈照隅」を、聖徳太子の人生や「十七条憲法」に仮託して考察した『教養として読んでおきたい「十七条憲法」』を、この度致知出版社から上梓じょうししました。前途有望な青年、既に日本社会を担っている壮年の皆さんを中心に、人生をよりよく生きる道標として「十七条憲法」をぜひ味読していただけたら幸いです。

「憲法十七条」市井研究家

永﨑孝文

ながさき・たかふみ

昭和25年奈良県生まれ。49年京都産業大学経済学部卒業。倉敷紡績、藤沢薬品工業(現・アステラス製薬)に勤務。平成15年退職。同年より6年間京都大学中国哲学史研究室に在籍し東洋思想を学ぶ。新刊に『教養として読んでおきたい「十七条憲法」』(致知出版社)。著書に『「憲法十七条」広義〝和魂〟〝漢才〟の出あいと現代的意義』(奈良新聞社)など。