2023年7月号
特集
学を為す、故に書を読む
一人称
  • 東京いずみ幼稚園園長小泉敏男

国語力が子供たちの
人生の土台をつくる

3歳、4歳の子供たちが大人でも難しい古文・漢文をすらすらと読んでしまうという驚きの幼稚園がある。小泉敏男氏が47年前に創立した「東京いずみ幼稚園」(東京都足立区)だ。試行錯誤の中から創り上げた独自の教育カリキュラムで、子供たちの能力をぐんぐん引き出し伸ばしてきた小泉氏に、これまでの歩みを辿っていただきながら、教育者としての思い、これから求められる幼児教育のあり方について語っていただいた。

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幼児教育を一生の仕事に

大学卒業後、自営業の父の協力を得て、地元・東京足立区に「東京いずみ幼稚園」を設立したのはいまから47年前、1976年のことでした。私は大学に通うかたわら、自宅で近所の子供たちを対象にした小さな塾を運営していたのですが、様々な学力の子たちと向き合う中で、そもそも小学校以前の教育が大切なのではないかという思いを深め、幼児教育を一生の仕事にしようと決めたのです。

最初こそ塾時代の評判や営業努力もあって、園児もそれなりに集まりました。ところが、当時はちょうどベビーブームが一段落して、子供の数がガクンと減った時期で、まだこれといった特徴がなかった当園には、だんだん園児が集まらなくなっていったのです。

このままでは経営が成り立たなくなってしまう——うちの園にお子さんを入れたいと、親御さんに思ってもらえるにはどうすればよいのか、親御さんは何に魅力を感じるのか、必死で考えました。

いろいろ考えた末、最初に取り組んだのが、園内に1年中泳ぐ練習ができる温水プールをつくることでした。なぜプールだったかというと、一つには私自身泳ぎが苦手だったからです。しかも、小学校高学年の時、体格がいいからというだけの理由で水泳大会に無理やり出場させられ、皆の見ている前で恥ずかしい思いをし、ますます苦手意識が強くなりました。

また、塾時代には、とにかく子供たちに自信をつけさせようと、「全教科でよい点を採らなくてもいいから、自分はこれが一番だと自信を持って言えるものを一つ見つけよう」と子供たちに伝えていました。水泳も同じで、小さい頃に練習して泳げるようになればその子の自信になるし、前向きな心情にもつながると考えたのです。

そこで、泳ぎを覚えるなら小さいうちがいい、水の怖さを知らないうちに泳げるようにしておくのが一番だと父を説得。当時幼稚園では珍しかった屋内温水プールを1983年に完成させました。

そして実際にカリキュラムの中に水泳を取り入れ、園児たちを泳がせてみたところ、3歳児でもどんどん泳げるようになっていったのです。これには驚きました。

その一方、「こんなに小さな子を無理やりプールに入れてどうするんだ!」などと、批判する親御さんたちもいました。しかしそんな親御さんには、現実にすいすい楽しそうに泳いでいるお子さんたちの姿が何よりの反論、説得になりました。

この経験から、親御さんは子供の成長、教育の成果が目に見えることが嬉しく、そこが園を評価する大事なポイントになることを経営者として教えられました。

東京いずみ幼稚園園長

小泉敏男

こいずみ・としお

昭和27年東京都生まれ。小学4年生から中学3年生までを対象として運営していた小泉補習塾を経て、51年父・小泉孝義と共にいずみ幼稚園を創設、副園長に就任。石井式漢字教育、ミュージックステップ音感教育などの導入、屋内温水プールの設置など、当時としては画期的なプログラムを次々と導入。平成7年に園長に就任。16年には第13回音楽教育振興賞を幼児教育界で初めて受賞。著書に『東京いずみ幼稚園式 美しい日本語が、心の強い子を育てる』(宝島社)がある。