2026年10月号
特集
運をつかむ
一人称
  • 越後ごぜ唄「さずきもん」主宰萱森直子
越後

小林ハルの生き方が
教えてくれたもの

目の見えない女性、瞽女が各地を旅しながら三味線の演奏と共に唄った瞽女唄。戦前・戦後の長きにわたり越後瞽女として活躍し、1978年に無形文化財保持者(人間国宝)に認定されたのが小林ハルさんである。2005年に105歳の天寿を全うしたハルさんの最後の弟子である萱森直子さんに、師から学んだ幸せな人生を実現していく秘訣、瞽女唄の伝承と普及にかける思いをお話しいただいた。

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    越後ごぜ唄「さずきもん」主宰

    萱森直子

    かやもり・なおこ

    昭和33年新潟県生まれ。無形文化財保持者(人間国宝)の長岡瞽女・小林ハル氏に師事。高田瞽女・杉本シズ氏を通して高田系瞽女唄も習得。現在は講演・演奏会、メディア出演、瞽女唄指導などに取り組む。著書に『さずきもんたちの唄 最後の弟子が語る瞽女・小林ハル』(左右社)。演奏や講演情報など詳細は、note『師匠: 萱森 直子 かやもり なおこ-越後ごぜ唄さずきもん』にて掲載。

    瞽女唄の魅力は迫力と即興性

    皆さんは〝うた〟を知っていますか? 瞽女唄とは、主に目の見えない女性、瞽女が集団で旅をしながら三味線を弾き、唄った唄のことをいいます。昔は一部地域を除いて全国にいたのですが、日本が近代化していく中で次第に少なくなっていき、戦後には現役の瞽女はほぼいなくなりました。

    しかし、私の生まれ育ったえち(新潟県)には、戦後になってもその伝統が残り、瞽女唄を唄うことのできる瞽女がご存命でした。

    その一人が、人間国宝にも認定された私の師匠である越後瞽女・小林ハルさんです。私は晩年のハルさんに11年師事し、現在は弟子のおけいや演奏会、講演や書籍の出版などを通じて、瞽女唄の伝承と普及に力を尽くしています。

    瞽女唄の魅力は、何といってもその圧倒的な迫力、臨機応変の即興性、自由さです。瞽女唄は目の見えない師から弟子へとでんで伝承されていくため、基本的に譜面がありません。また、その時のお客さんや状況次第で文句や間を臨機応変に変えることが求められますから、同じ曲でも瞽女によって際限のないほど多くのバリエーションが生じるのです。特に物語唄は長いもので一段30分×十段ありますが、それを瞽女が即興を交えてダーッと演奏するのを間近で聴くと、その迫力たるや驚いてひっくり返ってしまうほどです。