2018年12月号
特集
古典力入門
  • 隂山ラボ代表隂山英男

古典の音読が脳の働きを
劇的に高める

読み書き計算の徹底反復によって子供たちの能力向上を実現してきた隂山英男氏。その30年の歩みの中で気づいたのは、古文や漢文の名文音読が子供たちの脳の働きを劇的に変えてしまうということだった。なぜ名文の音読にそのような効果があるのか。隂山氏の近年の実践も踏まえてお話しいただいた。

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名文音読の始まり

私は30年前から、読み書き計算の徹底反復という日本の伝統的な教育法を指導してきました。その指導を通じて実感しているのが、古典などの名文を繰り返し素読すると、子供の学力向上に大きな効果があるということです。
 
始めた当初は、大した根拠もなかったのです。師匠の岸本裕史ひろし先生から音読の重要性は聞かされていましたが、小学3年生に3年生の教科書を読ませれば2、3回でスラスラ読むようになるし、意味も理解します。だから繰り返しの意義もあまり感じなかったのです。
 
その頃、ノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士が、中間子理論のヒントが子供の頃に祖父から教わった素読にあったと言っているのを知りました。それで古典の音読をやってみようと考えたのです。小学生が『学問のすゝめ』や『平家物語』をそらんじるのは格好いいな、とも思いました。要するに形から入ったのです。
 
実際に音読を始めてみると、意外なことに成績の低い子でもけっこう覚えてしまいます。そして、すらすら読めるようになると、なんとなく子供の心が落ち着いたように感じました。子供たちに「この文章を学校の帰り道に大声で諳んじてみなさい」と言ったところ、翌朝、クラスで一番腕白わんぱくな男の子が私のところに走ってきて、「ええことあったぁ!」と声を弾ませました。帰り道に『徒然草』の一節を暗誦あんしょうしていたら、通りにある家の中からお婆ちゃんが出てきて、「あら、立派な子や」と言っておやつをくれたというのです。この素読は地域のお年寄りに大いに受け、継続の後押しとなったのです。

隂山ラボ代表

隂山英男

かげやま・ひでお

昭和33年兵庫県生まれ。55年岡山大学法学部卒業。城崎郡内の小学校を経て平成元年より兵庫県朝来町立山口小学校教諭。公募により15年広島県尾道市立土堂小学校の校長に就任。18年京都市の立命館小学校副校長就任。現在は隂山ラボ代表。教育クリエイターとして全国各地で学力向上アドバイザーを務める。著書に『隂山メソッド徹底反復「音読プリント」』(小学館)『陰山英男の読書が好きになる名作』(講談社)など多数。