2016年5月号
特集
視座を高める
  • 米国国防総省キャリア・現役空軍少佐カイゾン・コーテ

ペンタゴンが教える
心の鍛え方

常に死と背中合わせの危険なミッションに挑み続けるペンタゴンの人々。そのペンタゴンには過酷な状況にあっても業務を遂行するための心を鍛えるトレーニング法がある。現在もペンタゴンに籍を置きつつ、そのトレーニング法をもとに独自のメソッドを開発したカイゾン・コーテ氏に、いくつかの心の鍛え方をご紹介いただいた。それは私たちが様々な問題を解決する上で、視座を高めるヒントでもある。

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いかなる間違いも失敗も許されないミッション

アメリカ国防総省、通称ペンタゴン。ここは軍人や一般職をはじめとする320万人を要する世界最大の組織です。国防の中枢だけに、その全貌は機密のベールに覆われ、一般には明らかにされていません。

しかし、そこで働く人々には、苛酷なミッションと想像を絶する厳しいトレーニングが課せられていることは誰もが想像できるでしょう。ハリウッド映画さながらの、息を呑むような情景が展開されていることも事実です。

想像を絶する厳しいトレーニングが課せられる理由。それはペンタゴンのミッションは絶対に、いかなる間違いも失敗も許されないからです。防衛やテロ対策、地域紛争処理、災害救助など、ペンタゴンのすべての任務は一歩間違えれば、尊い多くの人命をも巻き込みかねないものばかりです。そこにはただ一つ、「正解」という答えしかあってはならないのです。

私はかつて職業軍人(空軍将校)として北極で軍を率いた経験を持っています。その後はペンタゴン内局の国防情報システム局で任務を遂行してきました。また、サイバーセキュリティのスペシャリストとして、サイバーテロ撲滅に命を懸けてきました。そこで求められる答えが、やはり「正解」であったことは言うまでもないでしょう。

困難なミッションに向き合う時、心が怯まない人はいません。時に逃げ出しそうになってしまうこともあります。私を含めペンタゴンにいる人たちは少なからずその感情を味わっているはずです。しかし、こと国防においては、いつまでも怯んだままでいることは許されません。死を選びたくなければ、何が何でも立ち上がって目的達成のために前に進んでいく以外に道はないのです。

そういう時、最も重要になるのが心の持ち方です。いくら屈強な肉体や勝れた技術があったとしても、肝心の心が折れてしまっては、任務の完遂は不可能です。そのためにペンタゴンには様々なトレーニング法が準備されており、私自身も心を整えることで厳しい局面を打破できることを体験してきました。

そして、それは決してペンタゴンだけに当てはまるものではありません。生きる上で直面する試練や逆境を乗り越える上でも、基本は同じだからです。そのことに気づいた私は、ペンタゴンで行われる心のトレーニング法に自らの体験を取り入れ、一般にも適用できるメソッドを「The Training」として確立してきました。

私の歩みを交えながら、心を鍛えるいくつかの方法をご紹介したいと思います。

(米国国防総省キャリア・現役空軍少佐)

カイゾン・コーテ

Kaizon Cote

アメリカサンフランシスコ生まれ。アメリカ軍事大学院で修士課程を修めたのち、アメリカ国防総省国防情報システム局へ入局、情報部隊のエキスパートとして活躍。国防総省、軍で行われている様々なトレーニングの中から、人生の可能性を広げるためのノウハウを抽出した独自メソッドを2011年に完成。現在は国防総省、軍に籍を置きつつ、プライベート機関ディフェンス・ディベロップメント・コンセプツ社を開設し、セミナーなどを開催。著書に『ペンタゴン式ハードワークでも折れない心のつくり方』(KADOKAWA)などがある。