2019年7月号
特集
命は吾より作す
対談
  • (左)まるおか社長丸岡 守
  • (右)大津屋社長小川明彦

小が大に勝つ経営

大手の進出で中小の商業者が苦戦を強いられる中、着実に業績を伸ばし続ける企業がある。高品質で安全な食品を取り揃える群馬県高崎市の「スーパーまるおか」、かつての大衆食堂を彷彿とさせるダイニング・コンビニを展開する福井市の大津屋である。両社の強みはどのようにして築かれたのか。社長である丸岡 守、小川明彦両氏の話を通して見えてくる小が大に勝つ知恵。

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地方の小売店が全国から人を集める

小川 丸岡さんが経営される「スーパーまるおか」は群馬県高崎市という地方都市にありながら、全国からの来店者が絶えないとお聞きしています。私たちローカルコンビニも大手との競争の中で新しい戦略が求められていますので、きょうは丸岡さんにいろいろと知恵を授けていただきたいと思っているんです。

丸岡 とんでもありません。大津屋さんも地元密着型のコンビニを福井に定着させ、全国的に注目を集めていらっしゃいます。私こそ勉強させていただきます。

小川 早速ですが、「スーパーまるおか」は、販売している商品が他のスーパーとは違うそうですね。

丸岡 はい。私どもはナショナルブランド(全国的な知名度のあるメーカー・ブランド)は一切取り扱わず、おいしくて体に優しい商品だけを取り寄せて置くことをこだわりとしています。それまでの店舗を高崎市の郊外に移転させ、「スーパーまるおか」を新装オープンして7月30日で満4年なんですが、イオンモールという大型ショッピングセンターの奧隣にあるにもかかわらず、売り上げは順調に伸びています。店舗は145坪の広さしかありませんが、10億円ほどの年商があるんです。

「スーパーまるおか」の外観

小川 いやぁ大したものですね。それに大型店の隣に店を構えるという発想も大胆です。

丸岡 最初に大型店の横に店を移すと話したら、社員から家族、同級生まで「そんなでかいところの隣に行ったら、すぐにつぶされちゃうぞ」と皆猛反対でした。だけど、品ぞろえはまるで違うわけだし、大型店の隣という立地はお客様を呼び寄せる上でむしろ効果的ではないかと思っていて、結果は予想通りでしたね。商品もターゲットも大型店は安さを強調。うちはその反対ですから、お互いに食い合うことがないんです。

小川 どういう方々をターゲットにしているのですか。

丸岡 多少は高くてもおいしくて安全なものを口にしたいという志向のお客様ですね。地元の方が中心ですが、メディアで紹介されたり、コンサルタントの先生が紹介されたりして、遠くは北海道や鹿児島からわざわざお見えになる方もいらっしゃるんです。

高品質で安全な商品を多数取り揃えた売り場

小川 いいものはそうやって広がっていくのでしょうね。
私のほうは現在、福井市でローカルコンビニ「オレボステーション」を展開しています。普通のコンビニとは違ってダイニング・コンビニという日本でも珍しい業態です。コンビニと惣菜そうざい屋と大衆食堂をくっつけたような店をイメージしていただけたら分かりやすいと思います。このダイニング・コンビニを始めてから15年が経ちました。
最近では、それに磨きをかけた次世代型オレボステーションにしようと新しい機能を導入し、商品についてもナショナルブランドばかりではなく、安全でおいしく、なかなか手に入らないものを置くようにしているんです。

特に力を入れているのは、ライブ・キッチンというものです。ご注文を受けてから、お客様の目の前でステーキを焼いたり、コロッケを揚げたり、魚を焼いたり……。店内のイートインスペースには40~50席を準備していますから、できたての料理はここで召し上がっていただいてもいいし、お持ち帰りもできる。しかも、スマホのアプリで事前予約も可能。そういう次世代型の機能を入れ始めてから、平均日商は1割くらい上がりました。

大衆食堂をイメージしたオレボ食堂

丸岡 オーダーをいただいて調理をするって、まるでレストラン並みじゃないですか。しかも、普通コンビニで惣菜は取り扱いません。お話を聞いていて驚きました。

小川 「かつての大衆食堂」というのが私たちのウリで「うまい、安い、そして早い」をキャッチフレーズに掲げています。お客様は皆それぞれにいろいろなものを食べたいというニーズがあるので、ハンバーグ、空揚からあげといった大衆食堂によくある定番のメニューも多数提供しているんです。

コンビニ内に並ぶ多くの惣菜

丸岡 いま何店舗あるのですか。

小川 12店舗をすべて直営でやっています。福井市内のだいたい車で十分範囲のところに一軒という割合ですね。オレボステーションの評判が広がり、東京などからも出店の要請がありますが、ありがたいと思いつつ、お断りしています。福井の地で少しずつ増やしていけたらというのが、私の思いです。

まるおか社長

丸岡 守

まるおか・まもる

昭和19年群馬県生まれ。大学卒業後、父親が始めた「まるおか商店」を継ぎ、43年「スーパーまるおか」をオープン。平成10年には優良経営食料品小売店として最高賞の農林水産大臣賞を受賞。