2019年2月号
特集
気韻生動
インタビュー②
  • 横浜こどもホスピスプロジェクト代表理事田川尚登

子どもたちは皆、
使命を携え生まれてくる

「子どもホスピス」設立への道

愛する娘を難病で亡くした経緯から、宿泊・滞在施設「リラのいえ」の開設など、病気と闘う子どもとその家族を支援する活動に20年近く取り組んできた横浜こどもホスピスプロジェクト代表理事の田川尚登氏。いま、小児緩和ケアを提供する「子どもホスピス」設立に向けて邁進している田川氏に、その原点と活動に懸ける思いを語っていただいた。

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地域に根差した子どもホスピスを全国に

——田川さんは、2017年2月に第1回「全国こどもホスピスサミット」を横浜市で企画・開催され、大きな話題となりました。

難病などで命に限りがある子どもとそのご家族に寄り添い、支援する施設を「子どもホスピス」といいます。しかし日本にはまだ数軒しかないんです。
それは多くの方が、子どもホスピスに対して難病に苦しむ子どもたちが最期の時間を過ごす「暗い施設」だというイメージを持たれているからだと思うんですね。
でも私の子どもホスピスのイメージは、命に限りがある子どもたちが家族と楽しく過ごす施設という明るいものです。子どもは常に成長していますので、どんなに病気がつらくても、最期まで家族と遊ぼう、楽しい時間を過ごそうとします。ですから、子どもホスピスも本来はその楽しい時間をつくるお手伝いをする施設なんです。

——難病の子どもが家族との楽しい時を過ごす施設だと。

いまの暗いイメージを明るいものに変え、子どもホスピスを日本全国にもっと増やしていきたい。そのために、関係者に呼び掛けて今回の「全国こどもホスピスサミット」を開催し、広く情報発信させていただいたんですね。
そもそも子どもホスピスは、1982年にイギリスで発祥し、そこからドイツやオランダなど、ヨーロッパ諸国を中心に広がっていきました。イギリスには約50か所、ドイツには約20か所、九州くらいの大きさのオランダにも約10か所の施設があります。

——ヨーロッパの国々では、広く受け入れられているのですね。

私も2017年に初めてイギリスの子どもホスピスを見学し、翌年はドイツ、オランダにも行きました。その時に学んだのは、現地では子どもホスピスが周囲の支え、寄付によってしっかり運営されており、地域の自慢できる存在になっているということです。
いま私たちは、2020年を目標に、横浜市内に子どもホスピスを設立する計画を進めているのですが、イギリスやドイツなどのような地域に根づいた施設になっていければと思っているんです。

横浜こどもホスピスプロジェクト代表理事

田川尚登

たがわ・ひさと

昭和32年神奈川県生まれ。平成15年より、仕事をする傍ら小児医療支援活動に関わり、NPO法人スマイルオブキッズを設立。20年難病と闘う子どもにつき添う家族が利用できる宿泊・滞在施設「リラのいえ」を横浜市に開設。現在はNPO法人横浜こどもホスピスプロジェクト代表理事として、小児がん等で治療方法のない子どもたちと家族のための支援施設「子どもホスピス」の2020年までの開設を目指して活動している。