2019年2月号
特集
気韻生動
インタビュー①
  • ブラスニカ会長、ジャナウバ元市長山田勇次

運命は断固たる意志を
持ち前進する人に扉を開く

13歳でブラジルへ渡り、〝バナナ王〟の異名を取るまでの大成功を収めた山田勇次氏。雄大な彼の地で運営する農場の数は18、総面積は1万ヘクタールにも上ぼるという。相次ぐ困難から氏はいかにして立ち上がり、道なき道を切り拓いてきたのか。その生気に満ち溢れた道のりを振り返っていただいた。

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常に新しいものを打ち出していく

——山田さんは、ブラジルのバナナ農園で大きな成功を収められ、「バナナ王」とも呼ばれているそうですね。

いつも運がいいんですよ(笑)。苦労はするけど、最後には必ず成功する。そういうところが小さい頃からあるような気がしています。

——現地では、どのくらいの規模の農園を営まれているのですか。

ブラジル南東のジャナウバにあるブラスニカという会社で、18の農園を営んでいます。大きさはいろいろで、場所も1,000キロ、2,000キロ離れた所にもあるんですが、農地面積はトータルで1万ヘクタールになります。
つくっているのはほとんどがバナナで、他に果汁用のミカン類やパパイヤ、それから牧場もやっていて、多い時には4,000頭の牛を飼っていました。いまの売り上げは、日本円で100億円ほどになります。

——大変なスケールですね。

ただ、この頃は温暖化の影響で気候条件が変わってきたものだから、昔は寒くてバナナ栽培に向かなかったサンパウロ近郊にも場所を展開して、さらにチョコレートの原料のカカオ栽培にも取り組んでいこうと考えています。カカオは健康にいいし、カカオからできるチョコレートは世界中で知らない人がいません。これから菓子メーカー等の出資をつのって、カカオ農園もどんどん増やしていきたいんです。

それから、もう1つ力を入れているのがオーガニックです。化学肥料や農薬を使用しない栽培に徹底して取り組んでいく。たまたま余った牧草が捨ててあった所に、雨も降らないのに植物が立派に育っているのを偶然発見しましてね。調べたら、土の中でキノコ菌が繁殖していて、原始林と似たような状態になっていたんです。それを応用すれば、作物が病気にならないし、従来の3分の1の水の量で、バナナも野菜も美味おいしくて長持ちするものができる。発酵食品が体にいいのはよく知られていますが、畑の土を発酵状態にしてやれば、できる作物も体にいいだろうと思うんです。土の環境を整えることで、作物が綺麗きれいで腐りにくくなります。大規模栽培ではまだ世界でどこもやっていないやり方で、いまは研究段階ですが、確かな手応えを感じています。
スーパーでは、うちのバナナが1番売られていると思うけれども、これからの競争に負けないためにも、自然環境と消費者の健康のためにも、オーガニックに取り組むつもりです。そうやって常に新しいものを打ち出していかないとね。

ブラスニカ会長、ジャナウバ元市長

山田勇次

やまだ・ゆうじ

昭和22年北海道生まれ。36年家族とともにブラジルへ入植。42年ブラスニカ創業。バナナ栽培を手掛ける。平成25年会長。同年ジャナウバ市長(~28年)。